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477話 酷い有様だけど、掴んだもの

「あれ?」


 気がつくと見知らぬ部屋にいた。


 上半身裸でベッドに寝ている。

 正確に言うと、包帯が巻かれていた。


 体を動かすと痛みが走るものの、激痛ってほどじゃない。


「治療されている……?」


 あれだけの怪我、すぐに治るわけがない。

 たぶん、ポーションか治癒魔法を使ったのだろう。


 とはいえ、完治したわけじゃない。

 無茶をしたら傷口が広がるかもしれないから、おとなしくしておこう。


「えっと……」


 いまいち記憶が曖昧だ。

 僕は、なんでこんなところで寝ているんだろう?


「確か……そう。剣術大会の決勝戦でソフィアと戦って、それで、けっこう良い勝負をしていたような? いや、そうでもない?」


 少しずつ記憶を掘り返していく。

 過去に鮮やかな色がついていく。


「それで……ソフィアの痛烈な一撃を受けて、これはやばいって思って……あれ? それからどうなったんだっけ?」

「フェイトが勝ったんですよ」

「ソフィア」


 扉が開いてソフィアが姿を見せた。


 彼女一人。

 リコリスやアイシャ、レナの姿は見当たらない。


 ソフィアも治療の跡があった。

 ただ、僕ほどじゃないみたいで、普通に歩いている。


「僕が勝った、っていうのは……?」

「そのままの意味ですよ。フェイトは、私に勝利しました。剣術大会の優勝はフェイトですよ」

「……」

「フェイト?」

「……あ、ごめん。ちょっと予想外すぎていたから」


 記憶が曖昧という理由もある。

 でもそれ以上に、僕がソフィアに勝つ、という場面がまったく想像できない。


 本当に僕は優勝したのだろうか?


「フェイトは本当に強くなりましたね」

「そ、ソフィア……?」


 抱きしめられてしまう。

 柔らかいやら温かいやら慌ててしまうのだけど、彼女は離してくれない。


「すみません、子供扱いするようなことをして」

「う、ううん……気にしていないよ」

「ただ、今はこうさせてください」


 ソフィアの温もりに浸る。


「私は、まだフェイトの保護者というか、守っているつもりでいましたが……そうではなかったんですね。もうとっくに、私の手から巣立っていたんですね」

「そう、なのかな?」


 いつもソフィアに助けられている。

 何度も助けられている。


「私は負けました。そして、フェイトが勝ちました。きっと、そういうことなんだと思います」

「そっか」


 ようやくソフィアに勝った、という実感が湧いてきた。

 じわじわと喜びが広がる。


「ありがとう、ソフィア」

「どうしてお礼を?」

「ソフィアのおかげで強くなることができて、ここまで来ることができたから」


 ソフィアが勇気をくれた。

 だから、僕は今、ここにいることができる。


 そのことがたまらなく嬉しい。


「これで僕は、ソフィアの隣に立つ資格を得たかな?」

「もう」


 ソフィアは苦笑をして、じっとこちらを見つめてくる。


「そんな資格は、最初から持っていますよ。フェイトだけが持っているんですよ」

「そう、なの?」

「そうですよ。もっと、色々なことを自覚してくださいね? フェイトは、剣聖に勝利するほどの実力者で、そして……」


 ソフィアの顔がそっと近づいてきて……

 そして、僕達の距離がゼロになる。


「私の大好きな人なんですから」

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『ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?』


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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
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【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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