476話 VSソフィア・その5
実のところ、僕は限界が近い。
戦いだけを見るのなら、互角に行えているかもしれないけど……
内面まで判断するとなると、僕の方が圧倒的に不利だ。
当たり前だ。
骨にヒビが入っている状態で動いているのだから、無茶もいいところ。
我慢はしているものの、激痛は止まらない。
それに、怪我もどんどん悪化しているだろう。
これ以上時間をかけたら自爆してしまう。
だから、これが最後のチャンス。
全身全霊、全力全開。
ありったけの力を込めて……
「破山っ!!!」
ソフィアに最初に教えてもらった技を叩き込んだ。
「っ!?」
「いけえええええっ!!!」
ソフィアはガードが間に合わない。
僕の木剣がソフィアに届いて……
ゴガァッ!!!
轟音
衝撃。
そして、確かな手応え。
土煙が舞い上がり、ソフィアの姿が見えない。
視界が悪く、周囲の状況もよくわからない。
観客の歓声がピタリと止んでいた。
そんな状況だけど、ソフィアの気配を探ることができない。
それも当然だ。
僕は全部の力を使い果たしていた。
剣を支えになんとか立ち続けているものの、ちょっとでも気を抜けば倒れてしまいそう。
気絶しないのは怪我の痛みのおかげ。
満身創痍という言葉がぴったりと当てはまる状態で……
これ以上、どうすることもできない。
これでダメだったら?
終わりだ。
ソフィアが立っていたら、僕の負けが確定する。
さあ、結果はどうだ?
「……」
ややあって土煙が晴れて……
そして、剣を手に、地面に立つソフィアの姿があった。
「……はぁ」
ため息。
けっこういいところまでいったと思うんだけど、負けか。
悔しい。
でも、今、僕ができることは全部やった。
全ての力を出し尽くした。
それで届かないのならしょうがない。
いつかまた再戦を挑もう。
「……フェイト」
「うん」
「強くなりましたね」
「そうかな?」
「はい、とても。だって……」
ソフィアはにっこりと笑い、
「私を倒すほどに成長したのですから」
「え」
ソフィアの木剣にピシリとヒビが入った。
それは瞬く間に全体に広がり、粉々に砕け散る。
それから、ぐらりとソフィアの体が揺れた。
そのまま地面に倒れて……
完全に意識を失っている様子だ。
「勝者、フェイト・スティア―ト!!!」
審判が高らかにそう告げて……
でも僕は、勝利を実感できず、しばらくの間、ぽかんと棒立ちになるのだった。
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新連載です。
『ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?』
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