473話 VSソフィア・その2
瞬間、ソフィアの闘気が大幅に膨れ上がった。
「なっ……」
まだ余力を隠していた?
……いや、違う。
これは、大技を繰り出すために気を溜めているんだ。
ソフィアは後ろに跳んで距離を取る。
木剣を腰だめに構えて、前かがみに。
両足をしっかりと大地につけて、深く深く呼吸をする。
超高速の抜剣術……蓮華、かな?
だとしたらまずい。
蓮華は、一応、僕も撃つことができる。
ただ、撃たれたことはない。
故に防御手段を知らない。
どうする?
発動前に潰す?
それとも、ぶっつけ本番で防いでみせる?
……そうやって迷ったことが失敗だった。
発動前に潰すこともできず。
防ぐこともできず。
「四之太刀……蓮華!」
「っ……!?」
わずかな迷いを撃ち抜くように、ソフィアが抜剣した。
同時に超高速で前に出て、木剣を叩きつけてくる。
避け……
いや、防い……
ダメだ!?
「うぁ!?」
ゴッ! と、脇腹に強烈な衝撃が伝わる。
それをまともに受けた僕は、どうすることもできず、吹き飛ばされてしまう。
視界がぐるぐると回転して、受け身をとることもできない。
地面に痛烈に叩きつけられて……
リングアウト、ギリギリのところで止まる。
「決着です」
「……ぅ、あ……くぅ!」
脇腹が痛い。
神経に針を刺されているかのようで、泣きたくなるほどの痛みに襲われている。
ただ、そのおかげで意識を失うことなく、起きていることができた。
骨が折れた?
いや。
たぶん、ヒビが入っただけ。
って、だけ、なんて簡単に言えるようなことじゃない。
十分に大怪我だ。
体をちょっと動かすだけで激痛が走る。
起き上がろうとしたら、それだけで涙が出てしまう。
いや、ほんと……
まいった。
もっとソフィアに食らいつけると思っていたんだけど……
まさか、こんなにもあっさりと勝負がついてしまうなんて。
それなりに自信があったんだけど、粉々に打ち砕かれてしまう。
「フェイト、大丈夫ですか?」
「……なん、とか」
「すみません……手加減していたら絶対に負けていたため、そんな余裕はなくて……正直、危ういところでした」
「そっか……ソフィア、に……そこまで言わせたのなら……」
満足だよ。
そう言おうとして……
でも、その言葉が出てこない。
なぜか、素直に敗北を認めることができない。
どうして?
その答えは……
ああ、なるほど。
そういうことか。
僕は納得した。
自覚した。
まだ負けていない。
そう思っていて……
そう……僕は、自分で思っていた以上に、負けず嫌いのようだ。
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新連載です。
『ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?』
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