472話 VSソフィア・その1
「はぁっ!」
ソフィアは一歩、後ろに下がり……
競り合いを止めて、剣を横に薙いだ。
首を刈るような一撃。
ゾッと背中を震わせつつ、上体を反らして回避した。
速い。
斬撃だけじゃなくて、新しい攻撃に移るまでの速度が桁違いだ。
一切の無駄がない。
その上で、岩を砕くような威力が秘められている。
ただの木剣だとしても、直撃したらとんでもないことになるだろう。
下手をしたら死ぬかもしれない。
でも……
「……っ……」
ゾクゾクして。
ついでに、嬉しく思った。
ソフィアは手加減なんてしていない。
僕を脅威と認めて、全力を出してくれている。
一歩間違えればとても危うい状況なのだけど……
ソフィアと全力で戦えることが、一人の剣士として、とても嬉しく感じていた。
「このぉっ!」
負けていられない。
前に出て、剣を振る。
あっさりと受け止められてしまう。
あるいは避けられてしまう。
力はほぼほぼ互角。
いや。
僕の方がわずかに上かもしれない。
経験も互角。
僕もそれなりの修羅場を潜ってきたから、負けていない。
ただ、技術は別だ。
幼い頃から剣を握り続けてきたソフィアに、経験で追いつくことはできない。
圧倒的な差がある。
この差をどのようにして埋めていくか?
あるいは、ごまかしていくか?
そこに勝敗がかかってきそうだ。
「神王竜剣術……」
「壱乃大刀……」
「「破山!!!」」
同時に技を繰り出した。
木剣が交差した瞬間、ぶわっと、周囲に衝撃波が広がる。
観客達が小さな悲鳴、あるいは歓声をあげるのが聞こえてきた。
「やっぱり、ソフィアはすごいね」
「フェイトこそ。剣を握って1年足らずなんて、とても思えません」
「ありがとう」
剣を構えつつ、言葉を交わす。
その間も隙を探っているのだけど、まったく見つからない。
というか、脅威しか感じない。
今すぐにでも攻撃に入ってこられそうで、警戒することしかできず……
うん、ダメだ。
隙を見つけるどころか、守りに徹するので精一杯だ。
……まずいな。
まだ体力に余裕はある。
ダメージもほとんどない。
ただ、この状態が続くと、僕の負けがほぼほぼ確定してしまう。
僕はソフィアにまともにダメージを与えることができず……
逆に、僕は一方的にやられるだけ。
そんな未来が簡単に想像できた。
どこかで流れを変えないといけないんだけど……
「フェイト、すみません」
「え?」
「剣の師匠として、負けるわけにはいかないので……やや早いのですが、決着をつけさせてもらいますね」
瞬間、ソフィアの闘気が大幅に膨れ上がった。
◆ お知らせ ◆
新連載です。
『ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?』
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