471話 遥か高みへ
「……」
「……」
決勝戦の舞台。
そこで、僕はソフィアと対峙した。
ここに来るまで、観客達の歓声がうるさいくらいに響いていたんだけど……
でも、今はまったく聞こえない。
なにも気にならない。
全ての意識はソフィアに向けられていた。
この後の試合に全て集中していた。
「では、これより決勝戦を始めます!」
審判の声だけがかろうじて聞こえた。
「両者、構え」という合図に反応して、木剣を手に取る。
ソフィアも木剣を構えた。
それだけで、嵐のようなプレッシャーが放たれた。
そのまま吹き飛ばされてしまいそうになるけど、耐える。
うん。
大丈夫だ。
こうして、ソフィアと対峙することができている。
この剣がソフィアに届くか、それはまだわからない。
でも、戦う資格は得ているはず。
一度、深く息を吸う。
それと同時に、全身に気を巡らせる。
手足の隅々まで力を入れて……
そして、ゆっくりとなじませていく。
準備は万全。
後は全力で挑むだけ。
神様に祈ることはしない。
天に運を任せることもしない。
この試合だけは、僕の力だけで、全てを賭けて挑みたい。
「……」
「……」
僕とソフィアの視線が静かに交差する。
睨むわけではなくて。
温かいわけでもなくて。
とても静かな視線。
たぶん、僕も似たような目をしていると思う。
ただ、ソフィアと比べると、ちょっと緊張が混じっているかな?
なんて……
そんなことを考えるくらいの余裕はあった。
「始め!」
審判の合図。
そして、
「「っ……!!!」」
僕とソフィアは、ほぼほぼ同時に前に出た。
ガァンッ!
木剣と木剣が交差して、甲高い音が響いた。
衝撃が伝わり、手が痺れる。
その状態でも木剣から手を離さずに、むしろ、より強く握りしめた。
そして、相手の木剣を押すようにして前に出る。
まずは力比べ。
木剣を重ねるようにして、互いの力を競い合う。
ソフィアの力はすごい。
体は細く、そして、とても綺麗なのに、どこにこんな力があるんだろう?
ちょっとでも気を抜けば、一瞬で押し負けてしまいそうだ。
でも、僕だって負けていない。
しっかりと地面を両足で踏みしめて。
木剣を強く握りしめて。
必死に受け止めて、耐える。
……うん。
体の余裕はないものの、でも、耐えることができていた。
まだまだ余力はある。
最初の一歩は合格。
ならば、その次は?
◆ お知らせ ◆
新連載です。
『ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?』
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