470話 決勝戦
剣術大会の会場はたくさんの人で埋め尽くされていた。
これはもしかして、ソラスフィールで暮らす人、全員が押しかけてきているのでは?
そんなことを思うくらいにいっぱいだ。
さすがにちょっと緊張してしまう。
でも、緊張だけじゃなくて、わくわくする気持ちもあった。
こんな大舞台の中、僕はどこまで駆け上がることができるのか?
どこまで通用するのか?
それを確かめてみたい。
「フェイト♪」
レナが笑顔で隣に立つ。
試合の前。
彼女が側に控えてくれていた。
ちなみに、アイシャやリコリスはソフィアの方にいる。
僕だけ、なんていうのは不公平というか寂しいから。
「いよいよだね。緊張していない?」
「しているけど、でも、それだけじゃないよ」
「んー……ふふ、いい顔をしているね。ボクの好きな顔♪」
レナがこちらの顔を覗き込んで、にっこりと笑う。
僕は今、どんな顔をしているんだろう?
自分の頬に触れるけど、よくわからない。
「僕は……勝てるかな?」
自然とそんな不安が表に出ていた。
ソフィアと戦うことは楽しみだ。
零番図書館に入るため、という本来の目的はもう忘れている。
僕の力がどこまで通用するか?
今まで積み重ねてきたものを試してみたい。
それだけを思うのだけど……
「不安?」
「それは……うん、そうだね。やっぱり、うまくいくのかな、って考えちゃうや」
弱気になったらいけない、っていうことはわかっているんだけど……
それでも、ついつい考えてしまう。
戦う前からこんな調子じゃダメだ。
もっと強気で、勝ち気でいかないと。
でも、うまく心を整えることができなくて……
はぁ、情けないな。
「いいんじゃないかな、それで」
レナは特に気にした様子は見せず、笑顔はそのままだ。
「ボクは絶対に勝つぞー! っていうよりも、うーんどうなるかな? っていう方がフェイトらしいよ」
「それ、褒めているの……?」
「もちろん。変に調子に乗らないで、しっかりと自分を見つめている方が、ボクは好きだよ♪」
「僕の場合は臆病になっているだけかもしれないけどね」
「それでも、いいんじゃないかな? それだけ慎重、っていうことだもん」
「なんでもいいように解釈するんだね」
「好きな人のことだから♪」
レナがにへへ、と笑う。
その笑顔を見ていたら、なんか、不安が吹き飛んでしまう。
僕の剣がソフィアに届くか、それは置いておいて……
一人の女の子が、僕のことをここまで信じてくれている。
その事実はとても大事で、そして嬉しくて……うん。
弱気になっている場合じゃないな。
絶対に勝つとまでは言えないけど、でも、臆することなく気負けすることなく、全力を出すことを誓おう。
「フェイト、いい顔になったね♪」
「そうかな? って……もしかして、このために?」
「さて、なんのことでしょう?」
「……ありがとう」
「ふっふっふー、妻は夫を支えるものなんだよ♪」
「あはは……」
妻かどうかはさておいて……
レナに感謝だ。
「うん……行ってくるね」
「がんばれ!」
レナの声援を受けつつ、僕は決勝戦の舞台に上がる。
◆ お知らせ ◆
新連載です。
『ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?』
https://ncode.syosetu.com/n6423iq/
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