469話 女達の夜
「やっほー」
「む」
夜。
ソフィアは、宿の一階にある食堂で、果実酒を飲みつつのんびり過ごしていた。
すると、そこにレナが姿を見せた。
「ここ、いい?」
「ダメです」
「あ、店員さーん。ボクも果実酒をお願い」
「人の話を聞いていますか?」
「いいじゃん。たまには女同士、のんびり話をしようよ」
「まったく……」
強引なレナの押しに負けた様子で、ソフィアはため息をこぼす。
その間に、レナは届いた果実酒を一口飲んだ。
「んー……! 思い切り体を動かした後のお酒は美味しいね」
「おじさんみたいなことを言うんですね」
「それ、地味に傷つく一言なんだけど……まあいいや。それよりも、飲もう?」
「はいはい、乾杯」
「かんぱーい!」
レナとソフィアはグラスを合わせた。
「ねえねえ」
「なんですか?」
「ソフィアは、今日の試合、どんな展開を予想していた?」
「それは……」
「ごまかしはダメ。正直な感想を教えて」
「……7・3くらいであなたが勝つと思っていました」
フェイトのことを信じていないわけではない。
色々な事件を経て、急速な成長をした。
ただ、戦闘経験の少なさは力で補えるものではない。
瞬時の判断、勘などなど。
勝負を分ける要因が足りていない。
故に、それなりの確率でフェイトは敗北すると考えていた。
「フェイトを信じることができず……私は、自分が恥ずかしいです」
そんな想いがあったため、ソフィアは一人で酒を飲んでいた。
そんな彼女に、レナはあっさりと言う。
「仕方ないんじゃない? ボクも、正直、ボクが勝つと思っていたし。絶対に、とは言い切れないけど、しっかりやれば負けないとは思っていたよ」
「でも、負けた」
「うん。ちょっと悔しいけど、でも、なんか嬉しくてさ。フェイト、本当に強くなっていたよ。ボク達の予想を覆すくらいで、なんかもう、本当の実力が判断できないや」
レナは追加の酒を注文した。
「だから、ふへへ」
「なんですか、突然」
「惚れ直しちゃった♪」
「むっ」
レナの顔が赤くなる。
それは酔いによるものか、それとも別のものによるものか。
「今はソフィアがリードしているみたいだけど、ボク、負けないからね」
「それは過信というものですよ。私とフェイトの絆は、誰にも割くことはできません」
「本当に?」
「もちろんです」
「ボクが裸で迫って、抱いて♪ ってお願いしても、フェイトはなにもしないと思う」
「なっ、なっ……は、ハレンチです!」
「にゃはは。ソフィアは、そういう初心なところ、面白いね」
「まったくもう……」
ソフィアも追加の酒を頼んだ。
「とりあえず、それだけ言いたかったんだ」
「負けないよ、っていうことですか?」
「そそ」
レナは、残った酒をぐいっと一気に飲んだ。
「フェイトは、ボクがもらうよ」
「ダメです。フェイトは、私のものです」
「むっ」
「むっ」
二人は睨み合い、
「「……くすっ」」
同時に小さく笑う。
なんだか妙に楽しい。
このような話、今までしたことがないから新鮮に感じているのだろうか?
あるいは酔っているのだろうか?
「もう少し飲むつもりですが、一緒にどうですか?」
「いいね♪」
夜はゆっくりと更けていく……
◆ お知らせ ◆
新連載です。
『ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?』
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