467話 準決勝・決着
「うぁ!?」
木剣がレナを捉えた。
レナは脅威的な反射神経で攻撃から防御に転じる。
でも、僕は彼女の木剣を叩き折り……
そのまま痛烈な一撃を与えた。
レナの悲鳴。
そして、吹き飛び、転がる体。
「「「……」」」
一瞬、会場が沈黙に包まれた。
決着がついたか?
これで終わりか?
誰もが固唾をのんで見守る中、
「いたたたっ」
レナが起き上がる。
再び会場が沸いた。
「普通、木剣はこんな風にぐしゃばがー、って折れたりしないんだけど……っていうか。フェイト、今、ボクの動きを完全に見きっていたよね? どうして?」
「気がついたんだ」
レナの超高速移動の正体。
身体能力を強化していない。
ならば、その方法は……
「たぶん、だけど……特殊な歩法だよね?」
暗殺者などが使う技術だ。
特殊なリズムを刻むように足を進めることで、対象の認識をバグらせてしまうことが可能だ。
その罠にハマってしまうと、相手の姿を正確に捉えることができなくなってしまうとか。
ずっと昔……奴隷だった頃、冒険に必要になるだろうと色々な知識を詰め込んでいた時、そんな話を聞いたことがある。
レナは、暗殺者が使うような歩法で僕の距離感覚などをバグらせて、一瞬で移動したように錯覚させていたのだろう。
それを破る方法はただ一つ。
何事にも惑わされない集中力。
それと、限界までを見極める極限の動体視力。
要するに、しっかりと相手の動きを見る……だ。
「うわー、バレていたか。でも、さすがフェイトだね♪」
「確証はなかったから、ちょっと賭けだったけどね。当たったみたいでよかったよ」
それにしても、なかなかえげつない戦術だ。
最初は、魔力による身体能力強化。
対処方法は、目で見るのではなくて魔力の流れを感じ取る。
そこから特殊な歩法。
少し前に否定したはずの、目で見ることを必要とされる。
仕組みに気づくことができなかったら、レナの策略にドハマりしてしまい、抜け出すことができず、そのまま負けていただろう。
ただ優れた技術を持っているだけじゃなくて、巧妙な罠でもある。
「これ、リケンやゼノアス相手にも通用したんだけどなー。まあ、ボクの膂力が足りなくて、最後まで押しきれなかったけど」
「そ、そんなものを僕に使っていたんだ……」
「だって、絶対に勝ちたかったからね♪」
キラキラ笑顔で言われても、なんかこう、微妙な気持ちになってしまう。
レナは、どこまでいってもレナだなあ。
戦闘が大好きすぎる。
「どうするの?」
僕は木剣を構える。
レナの木剣は叩き折ったけど、それでも彼女なら、まだ戦うことができるだろう。
むしろ、レナは追い詰められてからが本番と言える。
逆境であればあるほど燃えるタイプだ、彼女は。
ここから苛烈な猛攻が繰り広げられる可能性はあるけど……
「ここまでにしようかな」
レナは折れた木剣を放り捨てて、両手を上げた。
「これ以上は、本当の殺し合いになっちゃうし……今のボクは、そんなことよりも、フェイトとイチャイチャする方に集中したいからね!」
それはそれでコメントに困る。
「そんなわけで、降参するよ」
会場がドッと湧いて、
「準決勝の勝者は、フェイト・スティア―ト選手だぁあああああ!!!」
審判が僕の勝利宣言を高らかに響かせるのだった。
◆ お知らせ ◆
新連載です。
『ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?』
https://ncode.syosetu.com/n6423iq/
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