466話 準決勝・その5
「ふふっ、さすがフェイト♪ ここまで保つなんて」
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
何度か切り結び……
レナが一度距離を取り、笑顔を見せた。
対する僕は笑う余裕なんてない。
肩で息をして、膝もちょっと震えている。
まずい。
とにかく、まずい。
レナの超加速はどうにかこうにか対応できていた。
でも、そこから繰り出される攻撃は別だ。
何度も何度も受け止めていると、手が痺れ、力が入らなくなってきてしまう。
このままだと、動きを見切ることはできても、攻撃を止めることはできなくなる。
わりと限界は近い。
そうなる前に、どうにかして反撃の糸口を掴まないと。
レナは超高速で動いていて……
僕は、その動きに合わせて防御をするので精一杯。
どうする?
どうすればいい?
「ほらほら、もっといくよー♪」
とても楽しそうにレナが突撃してきた。
最初は普通の突撃。
地面を蹴り、加速。
ダンスのステップを踏むかのように、優雅な動きで僕に迫り……斬撃。
「くっ」
こちらは簡単に受け止めることができた。
同時にレナの剣を絡め取るようにして、跳ね上げ……
「おっと」
カウンターが決まる前にレナは退いてしまう。
そして、再びの突撃。
今度は、例の意味不明な神速だ。
「ばぁ」
レナは子供のようないたずら顔をして、僕の背後に回り込んでいた。
慌てて振り返り……
しかし、そこでさらにレナが加速。
後ろを向いた僕の横に回り込み、木剣を薙ぐ。
「こっ……のぉ!」
振り向いた勢いをそのままに、前に跳んで転がるようにして避けた。
同時に地面を蹴り、砂を巻き上げてレナの追撃を防ぐ。
無様な戦いだけど、でも、負けるよりはいい。
「ちょっとちょっと、フェイトってばどうなっているの? この状態のボクの攻撃を何度も避けるなんて、ありえないんだけど」
「この状態、って言うことは、なにかしら仕掛けがあるんだね?」
「あっ」
しまった、という感じでレナは顔をひきつらせた。
「魔力で身体強化をしていない。でも、認識できないほどの速さで……うん?」
ふと、とある可能性に気がついた。
その閃きが外れている可能性はあるけど……
「試してみる価値はあるか」
僕は剣を上段に構えた。
天を突くかのような、大上段だ。
「もしかして、勝負を賭けに来た?」
「そうだね」
「どんな手を見せてくれるのか、すっごく楽しみ♪ えへへ……いくよ?」
レナは瞳をキラキラと輝かせつつ……
ふっと、姿を消した。
例の正体不明の超高速移動だ。
でも、僕の推測が正しいのなら……
「……」
意識を研ぎ澄ませる。
神経を張り巡らせる。
力を、魔力を、全てをこの一太刀に捧げる。
「そこだっ!」
「っ!?」
振り下ろした木剣はレナを捉えた。
◆ お知らせ ◆
新連載です。
『ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?』
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