465話 準決勝・その4
「ひぁ!?」
運が良いのか、それとも必然なのか。
僕の剣がレナに届いた。
木剣がレナの右肩を叩く。
木で作られた刃だけど、訓練のために作られた頑丈な代物なので、硬いという点では普通の剣と変わらない。
そんなもので肩を叩かれたとなると、ある意味、真剣を使うよりも強い衝撃が生まれる。
レナは悲鳴をあげて吹き飛んだ。
ただ、ダメージは少ない。
途中でくるっと回転。
さらに猫のようにしなやかに着地して、衝撃、ダメージを最小限に抑えてみせた。
「やるね」
「レナこそ」
「ボクが強いのは当然だからねー」
こんな時だけど、レナは嬉しそうな顔になる。
子供が自慢をしているみたいで、ちょっと微笑ましい。
でも、その実力は本物。
油断なんてすることはできない。
むしろ、今まで以上に警戒、集中をすることになる。
「フェイトの方がパワーは上。でも、スピードはボクが上かな?」
「なら、どうする?」
「んー……こうしようかな!」
レナは、にっこりと笑う。
そして、またレナが消えた。
「……」
慌てる必要はない。
レナは身体能力を強化して、視認できないほどの速度で動いているだけ。
対処の仕方は覚えた。
目で追うのではなくて、魔力の流れを感じ取ることで……
……いや、ちょっと待った。
すでに一度、僕はレナの超高速移動を破ってみせた。
それなのに同じことを繰り返すだろうか?
レナはバカじゃない。
奇抜な戦術と大胆な発想で戦い、敵となっていた頃は、とんでもなく苦戦させられたものだ。
そんなレナが単純行動を繰り返すわけがなくて……
「これはどう?」
「っ!?」
時間を止められたかのように、気がつけばレナが目の前に迫っていた。
一瞬で懐に潜り込まれてしまう。
でも、どうして!?
魔力の流れは探っていた。
だけど今はなにも感じていない。
「えっへっへー、フェイトの驚く顔が見れた♪」
「くっ……!?」
笑顔を浮かべつつ剣を振るレナ。
その強烈な一撃をどうにか防ぐことができた……けど。
攻撃は一回で終わらない。
ここで決めてみせるとばかりに、レナは連続で剣を振る。
右から左。
跳ね返ったかのように右へ戻り、今度は上に跳ね上がる。
そこから直上に落ちてきて、最後は突きに転じる。
「こっ……のぉ!!!」
息を吐く間もない超高速の連続攻撃。
反応できたのは、たぶん、奇跡だと思う。
肩や腕。
脇や太ももなどを木剣がかすめるものの、致命的な一撃はもらっていない。
まだいける。
大丈夫だ。
大丈夫だけど……
「くぅううう……!」
レナの苛烈な攻撃は続いている。
彼女の二つ目の超加速の秘密を解かないと、僕に勝ち目はない。
◆ お知らせ ◆
新連載です。
『ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?』
https://ncode.syosetu.com/n6423iq/
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