464話 準決勝・その3
「っ……!」
首の辺りがチリっとする感覚。
背後から魔力の流れを感じる。
僕の勘も背後が怪しいと告げている。
頭の中で警報が鳴る。
それらを信じて、僕は、一歩、横に動いた。
同時に駒のように体を回転させて、方向転換。
背後から来たレナの一撃をしっかりと受け止めた。
「うわ……!?」
剣が……重い!
今まで以上の力が込められていて、思わず、一歩、後ろに下がってしまう。
それでも剣を放り捨てることはなくて。
体勢を完全に崩すこともなくて。
どうにかこうにか、レナの必殺の一撃を受け止めることができた。
「えぇ……!? なんで、今の一撃を受け止められるのさ!?」
「レナ、魔法で身体能力を強化しているよね?」
「ぎくっ」
「だから、目を使うんじゃなくて、魔力の流れを追うことにしたんだ。そのおかげだよ」
「フェイト、剣士だよね? 魔法使いじゃないよね?」
「もちろん」
でも、リコリスと長い間一緒にいたから、なんとなくだけどわかるんだよね。
もちろん、魔法を使うことはできないけど。
「……フェイトって、時々、無茶苦茶だよね」
「そうかな?」
「でも、そういうところがすごく面白くて……好き♪」
戦いの最中、そういうドキッとするようなことを言わないでほしい。
これ、別にレナの戦略っていうわけじゃなくて、素でやっていることなんだよね。
だからこそ厄介というか……
試合中になんだけど、ものすごく反応に困る。
「よーし! どんどん楽しくなってきた! もっともっといくよ?」
「うん、どうぞ」
正直なところ、僕もちょっと楽しくなってきた。
レナのようなバトルマニアじゃないけど……
自分の腕がどこまで通用するのか?
どれくらい強くなることができたのか?
そういうことを確認する絶好の機会だ。
「でも、今度は僕からいくよ」
「お?」
退くのではなくて、前へ。
勝利を掴み取るために、地面を蹴り、レナに向けて突撃する。
「あはっ、そういうところも好き♪」
「ありがとう」
レナは笑っていて……
たぶん、僕も笑っていると思う。
「「はぁっ!!!」」
ほぼ同時に剣を振り……
そして、交差。
競り合いになり、互いに前に出ようと足に力を込める。
レナはスピード特化だ。
力はソフィアの方が上。
とはいえ、力が弱いわけじゃない。
あくまでもソフィアと比べたら……というだけで、レナの力は十分すぎるほどに脅威だ。
でも僕も、伊達にソフィアに何度も何度も稽古をつけてもらっていない。
これくらいなら耐えることができる。
いや……打ち勝つことができる。
「こっ……のぉおおお!」
「うわわ!?」
競り合いに勝ち、レナを押し戻すことに成功した。
もちろん、それだけで終わらせない。
体勢を崩したレナを追いかけて、さらに前に出た。
ただ、木剣は引く。
腰に構えて、抜刀の構え。
そして……
「四之太刀……蓮華!」




