463話 準決勝・その2
レナは姿勢を低く、剣を構えた。
片膝を地面につけていて、徒競走のスタートみたいな体勢だ。
なんだ?
これは初めて見るんだけど……
「いくよ」
レナの顔から笑顔が消えた。
それと同時に、ふっと、その姿が消える。
「っ!?」
横に、叩きつけてくるかのような強烈なプレッシャー。
いちいち確認しているヒマはない。
軌道を読むこともできない。
ほぼほぼ勘で木剣を差し出して……
ガァンッ!!!
木剣と木剣が重なり合う大きな一撃。
手が痺れるほどで、思わず木剣を取り落としてしまいそうになる。
「さすがフェイト、今のも防いじゃうんだ」
「レナ、今のはいったい……」
「秘密♪」
レナは、てへっと舌を出す。
当たり前だけど教えてくれないか。
今のはなんだろう?
レナが消えて……
次の瞬間、すでに横に回り込んでいた。
速いなんてものじゃない。
まるで瞬間移動をしたかのようだ。
そういう魔法があることは知っているけど……
でも、レナは剣士。
魔法を使うことはできないはず。
……いや、待てよ?
「もう一回、いくよ?」
「っ!?」
再びレナの姿が消えた。
目で追いかけることができない。
こうなったら、もう勘で動くしかない。
落ち着け、僕。
剣の腕は届かないとしても、それなりの修羅場をくぐり抜けてきたじゃないか。
やれる、やれるはずだ。
心を落ち着かせて……
そして、レナの攻撃そのものを読む。
「ここだ!」
「うわっ!?」
こちらの隙を誘うためか、レナはあえて真正面から突撃してきた。
タイミングを合わせて剣を振り、その突撃を食い止める。
「えぇ……二度も止める? これ、ボクの切り札なのに」
「なら、一回で終わらせないと。一回見たから、なんとなくだけど、わかってきたかも」
「一回でも止められる方がおかしいんだけど……ふふ。でも、さすがフェイトだね♪」
レナから、リコリスと似た雰囲気を感じる。
たぶん、だけど……
レナは魔法を使っているんじゃないかな?
リコリスが使うような攻撃や防御の魔法ではなくて。
己を強化する、身体能力を伸ばす魔法。
そうやって己の力を引き伸ばすことで、目でまったく追えないほどの超加速を手に入れた。
僕の推測が正しいか、間違っているか。
それは、次の一撃で判明するはずだ。
「……いくよ」
レナが三度、消えた。
対する僕は目を閉じる。
彼女はあまりにも速い。
その影さえも視認することができない。
目で見ても無駄だ。
レナが魔力強化をしているという前提で……
魔力の流れを感じた方がいい。
その結果は……




