462話 準決勝・その1
全力で地面を蹴り、前に出て……
しかし、レナは僕よりもさらに速い。
「あはっ」
レナが先に剣を振る。
速く鋭く、力が乗せられた強烈な一撃だ。
木剣だとしても、直撃したらタダでは済まないはず。
よくて骨折。
下手したら死んでしまう。
故に、これはもう真剣勝負と同じだ。
「くっ……!?」
「へぇ、今のを受け止めるんだ。さすがフェイト♪ なら、もっと加速していくよ!」
レナは嬉しそうに笑い、さらにステップを踏んだ。
ザッ! ザッ! ザッ!
地面を蹴る音が激しくなる。
それと同時にレナの姿があちらこちらに跳ぶ。
超高速で移動しているため目が追いつかないのだろう。
レナは、ソフィアに力で劣る。
でも、速度はレナの方が上だ。
まともに視ようとしてもダメだ。
目で追いかけるのではなくて、気配を感じ取らないと。
「……そこ!」
タイミングを図り、右側に剣を振る。
ちょうどいい感じでレナを捉えることができた。
ガァンッ!
木剣と木剣が重なり、鈍い音が響く。
そのまま競り合う形になり、足から手に、全身に力を込める。
「うんうん、やっぱりフェイトはすごいね。これ、最高かも♪」
「レナは相変わらずだね」
バトルマニアすぎる。
「それがボクだからね」
「ついていく方、振り回される方は大変なんだけど……」
「それがやみつきになるようにしてあげる♪」
レナは、あえて後ろに退いた。
競り合いを止めて、再び地面を蹴り加速。
楕円を描くようにして、僕の横に回り込もうとする。
とはいえ、そんな単純な動きをニ度、続けて披露するとは思えない。
これはフェイク。
たぶん、レナの本当の狙いは……
「ふっ!」
直前、レナは強く地面を蹴り、高く跳躍した。
空中でくるっと猫のように回転。
そうすることで軌道を変更して、僕の真後ろに着地した。
同時に剣をこちらに振る。
「甘いよ!」
「えっ」
レナの行動は読んでいた。
今までに積み重ねてきた経験と……
それと、ちょくちょく稽古をつけてもらっているおかげ。
レナは確かに速い。
目で追いかけられないほどだ。
でも、速度を出すことに集中しているからなのか、わりと動きは単純だ。
見えないものの、予測は立てやすい。
その予測が成功して、僕は逆にカウンターをくらわせることに成功した。
「ぐっ……!!!」
僕の木剣がレナの右肩を叩く。
でも、浅い。
レナは顔をしかめたものの、すぐに後ろに退いた。
その動きに乱れはない。
「やるね」
「レナも」
今のところ互角だけど……
でも、まったく油断はできない。
というか、これからが危ない。
なぜなら……
「ふふ♪ すごく、すごく楽しくなってきたかも♪」
レナは生粋のバトルマニアなのだから、追い詰めれば追い詰めるほど強くなる。




