461話 勝ち上がり、待ち受けている者
その後も試合が重ねられていき、特に問題なく勝ち上がることができた。
イロモノ選手は最初だけで、後はまともな選手が多い。
誰も彼も強敵で、ヒヤリとする場面もあった。
でも、本能的な危機感を感じることはなくて……
僕は準決勝まで勝ち上がることができた。
――――――――――
『さあ、やってまいりました! 本日最後の試合! 予選CブロックとDブロックの勝者が激突する、準決勝戦! その注目の選手は、この二人だぁーーーーー!!!』
僕は少し緊張しつつ、準決勝の舞台に立つ。
そして、もう一人。
準決勝の舞台に立つのは……レナだ。
「やっほー、フェイト」
「やっほー、って……気軽だね」
「いや、ボク、いつもこんな感じじゃん? フェイトを相手に、他にどんな反応をすればいいのさ?」
「まあ、それもそうだけど……」
準決勝の舞台だから、なんかこう、もっと威厳に満ちた挨拶をするとか、そういうふさわしい振る舞いがあると思うんだけど。
「ねえねえ、フェイト。せっかくだから賭けをしない?」
「賭け?」
「勝った方が負けた方に一つ、なんでも命令できる……とか」
レナがニヤリと笑う。
いたずらを企んでいる子供みたいだ。
よからぬことを考えているのだろう。
あと、勝つ自信があるのだろう。
レナは強い。
たぶん、ソフィアでもまともに戦えば苦戦するはず。
そんなレナと戦えば、僕が勝てる確率は相当低い。
よくてニ割、っていうところかな?
でも……
「いいよ」
自信たっぷりのレナを見ていたら、負けられない、っていう気持ちが湧き上がってきた。
男して剣士として、一矢報いてやりたいと思う。
「でも、わかっていると思うけど、あまりに無茶な命令はダメだよ?」
「えっ」
「……どんな命令を考えていたの?」
「あはは、冗談だよ冗談」
嘘だ。
絶対本気だった。
とんでもない命令をするつもりだった。
うん。
絶対に負けられないぞ、これは。
「じゃ、受けるってことでいいね?」
「いいよ」
「でゅふふ……」
レナが気持ちの悪い笑みをこぼす。
……はやまったかもしれない。
「両者、構え!」
後悔している間に審判の声が響いた。
賭けのことは一度、忘れよう。
今は試合のことだけを考えないと。
一つに集中しないと勝てない。
レナはそれだけの相手だ。
「……」
「……」
互いに剣を構えて相手を睨みつける。
視線と視線が激突して、ビリビリと空気が震えるかのようだった。
戦いはすでに始まっているようなものだ。
ここでレナの気迫に飲まれたらいけない。
「はじめっ!」
「「っ……!!!」」
審判の合図と同時に、僕とレナは同時に駆けた。




