457話 のんびり気晴らしタイム
大会2日前。
聖獣についての調査は大会で優勝しないと進めることができない。
かといって、大会で優勝するための訓練をしてもあまり意味がない。
数日で強くなれるわけがない。
もちろん、毎日の基礎トレーニングは続けるけど……
ここに来て、焦って訓練量を増やすことはしない。
それで怪我でもしたら元も子もない。
むしろ、体を休める必要があるわけで……
「さあ、フェイト、いきますよ!」
「今日はボク達とデートだよ♪」
ソフィアとレナに手を引っ張られて、三人で遊ぶことに。
アイシャ達は、リコリスと一緒になってお昼寝をしている。
今日はぽかぽか陽気だから、たぶん、まだまだ寝ていると思う。
たまには、一日中寝る日があってもいいはず。
「えっと……三人で?」
「私は不満なのですが、レナがしつこくて……」
「ちょっとくらい飴をくれてもいいじゃん。でないと、暴れるよ♪」
「……と、言うものなので、仕方なく」
「あはは……」
レナの場合、本気でやりかねない。
ついつい乾いた笑みがこぼれた。
「さあ、行きましょう」
「ほらほら、時間は限られているよー!」
……まあ、たまにはこういうのもいいか。
そう思い、僕は手を引かれるまま二人についていった。
――――――――――
「大会期間中だから、色々な露店が出ていますね」
「あっ、金魚すくいだよ、金魚すくい! やろ?」
「うーん……すくえたとしても、さすがに金魚は旅に連れていけないから、戻すんだよ?」
「それでいいよ。よーし、全部すくうぞー!」
「ふふ、負けていられませんね!」
「あ、ちょ……」
「ひぃいいいいい、な、なんだこのお客さん達は!? うちの店の金魚が次々と……か、勘弁してください!!!」
――――――――――
「あ、綿あめですよ。食べていきませんか?」
「懐かしいね。お菓子と同じ感じで、大人になっても、たまに無性に食べたくなるよね」
「ふぁ~♪ 甘くてふわふわでおいしー!」
「もう食べていた!?」
「フェイト、私の綿あめを一緒に食べませんか? 一人ではちょっと多いので」
「あー、抜け駆けしようとしてる! ボクの綿あめも食べて!」
「ま、待って。ふたりとも、綿あめをぐいぐいって押し付けてこないで!?」
「さあ、フェイト!」
「ほら、フェイト!」
「ああもう、口元がべたべただよ……」
――――――――――
「露店といえば、ちょっと具の少ない焼きそばですね」
「わかるー。特別こだわっているわけでもなくて、そんなに美味しくないんだけど、でも、なぜか食べたくなるんだよね」
「雰囲気のおかげかもしれないね」
「というわけで、さっそく買ってきました。はい、二人共、どうぞ」
「ありがとう、ソフィア」
「いただきまーす! はふっ、はふっ。んー、粉っぽくて具がない!」
「あはは、そんなものだからね。こういうところの焼きそばって」
「でも、それがたまらない!」
「味ではなくて、雰囲気を楽しむものなのかもしれませんね」
「みんな一緒だから、っていうのもあると思うよ」
――――――――――
……そんな感じであちらこちらを見て回り、気がつけば陽が暮れていた。
街の彼方に太陽がゆっくり沈んでいって、赤い空が静かに夜に染まっていく。
「楽しかったですね、フェイト。それと……まあ、レナも一緒にいて、そこそこ楽しむことができましたよ」
「ま、ボクも似たような感想かな。ソフィアもなかなか面白い人だね」
思えば、この二人が切り合う以外でまともに話をして、遊んだのは初めてかもしれない。
色々と遅れたものの、互いを認めることができたのかな?
できればもっと仲良くなってほしいけど……
「でも、やっぱりボクの方がフェイトにふさわしいかな? 今日一日、ソフィアと一緒にいてわかったけど、女性としての魅力は、なにもかもボクの方が上だし!」
「あら、おかしなことを言うんですね。ふふ、おかしすぎて笑ってしまいます。レナの方が上? 性格は適当で、家事もできず、それと……とある部分はとても平らだと思うのですが」
「……ヤルの?」
「……受けて立ちますよ」
二人が親友になるのは、もっともっと先のようだ。
やれやれ。




