450話 可能性の話
ソラスフィールにやってきて3日が経った。
僕とソフィアとレナは、交代でアイシャ達の面倒を見つつ、手が空いた時は図書館に通い、聖獣に関する調査を進めた。
ライラも図書館に通い、調査を進めている。
リコリスは……
まあ、うん。
遊び歩いていた。
そんな感じで3日が経ったのだけど、進捗はあまりない。
聖獣について記載されている書物が少なくて……
それと、書物が多すぎるせいで、どうにもこうにも目的の本にたどり着くことができない。
「うーん……ちょっと方針転換した方がよさそうだね」
昼。
僕、ソフィア、レナ、ライラで休憩していると、そんな話が出てきた。
ちなみに、リコリスはお留守番。
アイシャ達の面倒を見てもらっている。
放っておくと遊んでしまうので、これが一番だ。
「聖獣や聖域に関する情報はちらほらとあるんだけど、でも、どれも伝承といった程度のもの。詳しく書かれているわけじゃなくて、肝心なところに踏み込むことができないんだよね」
「全ての情報を組み合わせることで新しい真実が……なんていう話もありませんね」
「あー……文字ばかり見て目が疲れたよぉ。フェイトぉ、慰めてぇ」
「どさくさに紛れてフェイトに抱きつこうとしないでください」
「じゃあ、真正面から堂々といくね♪」
「そういう問題ではありません!」
「フシャー!」
「がるるる!」
ソフィアとレナが睨み合う。
休憩なんだから、ちょっと落ち着こう?
「まあまあ。ちょっとずつ情報は集まっているから、あと一つか二つ、大きな情報が入れば、わりといい感じになると思うよ?」
ライラは前向きで笑顔。
疲れなんて見せておらず、調査がとても楽しいといった様子だ。
「うまくいくかな?」
「そればかりはなんとも。でも、積み重ねてきた努力は裏切らないよ」
「うん、そうだね」
「ただ……」
ふと、ライラが憂い顔を見せた。
驚きだ。
とても楽しそうに調査を進めていたのに、なにを問題視しているのだろう?
「いやね、ふと疑問に思ったんだよ」
「なにを?」
「聖獣や聖域の情報を得ることができたとして……その場合、君達はどうするんだい?」
「え」
「噂のようなものだけど、聖域は、聖獣が暮らす場所と言われている。彼らのとっての楽園だ。そんなところを見つけたのなら、そこに聖獣を返すべきだと思わないかい?」
「それ、は……」
ライラの話はまったく予想しておらず、考えてもいなかったことで……
ガツンと頭を殴られたようなショックを受けた。
スノウとマシュマロを聖域に返す?
二人とお別れ?
そっか……うん。
そういう可能性も考えないといけないのか。
聖獣であるスノウとマシュマロは、この世界にとって異質な存在だ。
もちろん、だからといって受け入れられないわけじゃない。
僕達だけじゃなくて、二人を受け入れてくれる人はたくさんいるはず。
ただ……
だとしても、二人が本来暮らすべき場所は別にある。
そんな話を聞かされたとしたら、僕達は、どうすればいいのだろう?
「……」
ソフィアもこの可能性は考えてなかった様子で、深く考えていた。
レナは……
「ま、そこら辺は後で考えればいいんじゃない? なにもわからない中、さらに先のことを考えてもあまり意味ないよ」
現実的な意見が飛び出す。
彼女の経験上、一歩引いて、客観的な意見を出すことができるのだろう。
「そうだね、レナ君の言う通りだ。ただ、一応、そういう可能性もあるということを考えておいた方がいいよ」
「そう……ですね」
ライラの言葉は深く、鋭く。
僕の心に、棘のように突き刺さった。




