446話 勉強タイム
無事、ソラスフィールに到着した。
剣術大会の開催が近いということで、混んでいないかちょっと心配だったけど、でも、宿も確保することができた。
ひとまず1週間。
3日前に申告すれば延長も可能らしい。
柔軟な対応に感謝だ。
旅の疲れが出たらしく、アイシャはお昼寝タイム。
スノウとマシュマロも一緒に寝て……
ソフィアが三人を見てくれている。
その間に、僕は、レナとリコリスと一緒に図書館に向かった。
剣術大会は気になるけど、やっぱり、ここに来た目的を果たさないと。
でも……
「うーん……見つからないね」
「ボク、あまり読書しないから、文字読むの苦手なんだよねー」
「あたしは、そもそも妖精だから、サイズが違いすぎてちゃんと読めないわ」
三人で分担してマシュマロのことを調べていくものの、今のところ、新しい発見はない。
簡単に行くとは思っていなかったけど、これは、予想以上に苦戦しそうだ。
街にある図書館は十を超える。
その一つ一つに十万以上の蔵書が収められていて……
全部を調べるとしたら、単純計算で100万冊を読まないといけない。
「気が遠くなるような作業だね」
「10年くらい滞在しないと無理じゃない?」
「小説や別のジャンルの本は省いていいから、十分の一以下に絞れるだろうけど……」
「それでも10万冊かぁ……やば。ボク、眠くなってきたかも」
「あたしもー」
「二人共、がんばって」
難しい本を読むと眠くなるという気持ちはわかるけど、ここで負けてはいけない。
「とりあえず、休憩にしようか。そろそろいい時間だから、お昼を食べに行こう?」
「「さんせー!」」
レナとリコリスが声を揃えて、目をキラキラと輝かせた。
けっこう二人の相性は良いのかもしれない。
図書館を後にして、近くの定食屋に入る。
それぞれ注文をして、空腹を満たした。
「適当に探すんじゃなくて、方針を決めた方がいいかもしれないね」
食後のドリンクを飲みつつ、今後の対策を考える。
「さんせー」
「あたしが占ってみましょうか?」
「当たるの?」
「さあ?」
「なんで本人がわからなそうにしているのさ」
「占いなんて気休めみたいなものよ!」
そうかもしれないけど、本人が言わないでほしい。
「やっぱり、本に詳しい識者を探すのが一番じゃないかな? その人に、こういう本はない? って聞くの」
「うん、良いアイディアだと思う」
「有名な識者は……まあ、聞き込みをすれば、ある程度は絞れるよね。ここ、そういう街だもん」
「うんうん」
「でも、あたし達のお願いを聞いてくれるかしら? 向こうからしたら、あたし達は見知らぬ誰かで、お願いを聞く義理も義務もないと思うけど」
「「……」」
リコリスの正論に、ついつい黙ってしまう。
そう言われるとそうなんだけど……うーん。
どうしたらいいんだろう?
「ま、その時はその時考えればいいんじゃない? 交渉はがんばるっていうことで、今は、識者を見つけることをがんばろ?」
「そうだね」
リスクばかり考えていても仕方ない。
それよりも、うまくいく! と信じて、前向きに活動した方が精神的に楽だ。
「おいおい、またか?」
話がある程度まとまったところで、ふと、苛立ち混じりの声が聞こえてきた。
店員のものだ。
「あんた、また金がないのか? これで何回目だよ」
「いやー、ごめんね? でも、勘違いしないで欲しい。食い逃げを企んでいるわけじゃないんだ。現に、前回の分を持ってきただろう?」
「それで今回の分を払えなくなっているから、あまり意味はないんだがね」
「はっはっは、申しわけない」
「ったく。まあ、先生のことだから信用はしているけどね。こういうことは、あまりないようにしてくれよ?」
「気をつけるよ」
気になる会話に視線を動かして……
ついつい固まる。
リコリスも驚いた様子で固まっていた。
向こうもこちらに気づく。
「おや? もしかして、フェイト・スティアート君かな?」