445話 ソラスフィール
馬車を走らせることしばらく……
僕達は、学問の街、ソラスフィールに到着した。
「ここがソラスフィール……」
街全体が高い塀に囲まれていて、さらに、その手前に堀が作られていた。
塀の上に砲台が複数並べられている。
ただ、人が常駐している様子はなくて、砲座も見当たらない。
もしかして無人で勝手に動く?
「へー、なかなかの街ね。このリコリスちゃんを楽しませてくれるかしら?」
「リコリスって、なんかいつも偉そうだよね。ボク、そういうところは敵わないと思うよ」
「はっはっは! 当たり前よ! 美少女妖精リコリスちゃんは無敵なんだから」
嫌味を言われていることに気づこうね?
最近、リコリスの頭がちょっと心配になる。
元気なことはいいんだけど、でも、少しは勉強もしておいた方がいいかもしれない。
「おーい、みんなー! こっちこっち!」
先導するレナが、先でぶんぶんと手を振る。
ソフィアは馬車をそちらに動かしていく。
「って、すごい並んでいるね」
塀を切り抜くようにして作られた門には、たくさんの人が並んでいた。
ぱっと見で、100人以上いるような気がする。
「これ、全部ソラスフィールに?」
「みたいですね。これほどの数は、なかなか見たことはありませんが……」
「ソラスフィールなら当然かな? むしろ、今日は少ない方だと思うよ」
レナがドヤ顔で語る。
「観光地ってわけじゃないから、一般人は少ないけどね。ただ、学問の街の呼び名は伊達じゃないからね。知識を求める人が世界中からやってくるんだよ」
「詳しいんだね」
「同盟に所属していた頃、ソラスフィールを落とそうか、なんて話があったから、その時に色々と調べて」
物騒な思い出話が出てきた!?
「あと、今は……うん。ちょうど剣術大会が近づいているから、その影響で、普段はいない観光客も増えているんじゃないかな?」
「剣術大会?」
学問の街なのに剣?
「ボク……というか、同盟みたいな悪いことを考える人は、世の中にはたくさんいるからね。ソラスフィールの知識を独占してやろう、とか。そういう人から街を守るために、強い冒険者とかが雇われているんだ」
「その強い人を探すために、剣術大会を?」
「そゆこと」
納得の理由だ。
街を守る人を探すだけではなくて、お祭りにして、観光客も呼ぶ。
一石二鳥だ。
「フェイト、出場してみたらどうですか?」
「えぇ!?」
いきなりソフィアに無茶振りをされた。
「どうして、そんな話に……?」
「いえ。せっかくの機会なので、挑んでみるのも悪くないかな、と思いまして。自分の腕を試してみたいと思いませんか?」
「それは……」
ちょっとある。
奴隷だった僕が、今、どれだけ強くなることができたのか?
一人の男として知りたいと思う。
「レナ、大会の詳細は覚えていませんか?」
「んー……さすがに覚えてないや。そういう大会があっただけ、っていうことしか」
「そうですか。まあ、結論を急ぐ必要はないですね。私達の目的と違いますし、少し考えてからにしましょうか」
「うん、そうだね」
そんな話をしている間に列が進み、街に入れるようになった。
たくさんの人がいたけど、街にとっては日常茶飯事らしく、スムーズにチェックが進んでいるようだ。
僕達のチェックも問題なく終わった。
馬車を進めて門を潜る。
「ここが、学問の街ソラスフィール……か」
マシュマロについて、新しいことを知ることができるだろうか?
あるいは、なにか事件が待ち受けているのだろうか?
その答えは……




