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443話 教育ママリコリス

「んー……」

「にゃん?」


 揺れる馬車の中。

 リコリスとマシュマロが向き合い、じっと見つめ合っていた。


「どうしたの?」

「この猫もどきのことを考えていたの」

「もどき、って」


 その言い方に苦笑してしまう。


「この子って、聖獣なんでしょ?」

「可能性が高いだけで、確定はしていないけどね」

「なら、頭もいいんじゃない?」

「うーん……たぶん?」


 猫っぽくて、気まぐれな性格をしているけれど……

 時折、こちらの会話を理解しているような素振りを見せることがある。

 たぶん、本当に理解しているんだと思う。


「芸を仕込んでみるのはどうかしら!?」

「芸?」

「なんかこう、面白くて爆笑できるような芸! そうすれば、旅先でうっはうはよ」

「あのね……」


 リコリスの目が金貨のようにキラキラと輝いていた。


 彼女は本当に妖精なのだろうか?

 妖精にしては、考え方が俗すぎるというか、人間くさすぎるのだけど……


「にゃー」

「おっ、あんた、興味ある?」

「にゃん!」

「うんうん。いいわね、あんた。見込みがあるわ」


 乗り気……なのかな?

 でも、マシュマロは賢いから、嫌なことはしないと思う。


 ちょっと様子を見てみよう。


「じゃあ、まずはお手よ。はい、お手!」

「にゃん」


 マシュマロがリコリスの頭にぽんと右前脚を乗せた。

 手じゃないのは、リコリスが妖精サイズで小さいからだろう。


「やるじゃない。なら、おかわり!」

「にゃん」

「バク転」

「にゃん」

「三回、くるっと回ってわん!」

「わんっ!」

「えぇ!?」


 猫なのに、わんって鳴いた……

 ど、どういうこと?


「す、すごいわ!」


 リコリスは興奮気味に声を大きくした。

 その目は輝いていて、マシュマロに対する評価が急上昇している感じだ。


「マシュマロ。あなた、相当やるわね」

「にゃふー」

「どう? あたしとタッグを組まない? 一生、遊んで暮らせるほどに稼がせてあげるわ。そう、あたしは今、未来の宝石の原石を見つけたのよ!」


 なんかテンションがおかしい。


「あたしが色々と計画を考えてあげる。普段の勉強、特訓のスケジュールはもちろん、食事の管理もしてあげるわ。健康はもちろんだけど、太ったりしたら大変だからね」

「にゃん」

「ふ、ふふふ……! いける、いけるわ! このあたしが、あんたをスター・ロードに導いてあげる!」

「えっと……」


 妙なスイッチが入ってしまったみたいだ。


 マシュマロが本気で望んているならいいんだけど……

 たぶん、違う。

 マシュマロは、リコリスが遊んでくれていると思っているのだろう。

 現に、楽しそうに尻尾を揺らしている。

 スターになりたいとか、そんなことは考えていないはず。


「えっと……リコリス? 旅もあるから、そういう大変そうなことはしない方が」

「大丈夫よ。このスーパーマネージメントオフィサーリコリスちゃんなら、不可能を可能しちゃうわ!」


 なんて?


「この子の将来は、今、決まるの。今がとても大事なタイミングなの。あたしが導いてあげないと!」


 教育ママのようなことを言い出した。

 おかしいな?

 お酒でも飲んでいるのかな?


「そう、あたしはマシュマロを一流のスターにしてみせる!」

「……さっきから黙って話を聞いていれば、頭のおかしいことを言わないでください」

「ぎゃん!?」


 呆れた様子のソフィアが、リコリスをデコピンで叩き落した。

 うわ、痛そう……


「いい? マシュマロはあなたのおもちゃではありません。軽い芸を仕込むくらいならまだしも、スターにさせるとか、そんな無茶はダメですよ」

「でも……」

「ダメです!」


 ソフィアがぴしゃりと言う。

 その姿は教育ママそのもので……

 このパーティーの中で、ヒエラルキーの頂点にいるのはソフィアだなあ、なんて思うのだった。


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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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[一言] マシュマロって猫だったの?
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