表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
440/520

439話 夜の散歩

 夜。

 部屋の明かりを消して、みんなで布団を並べて寝る。


「……」


 布団に入ったものの、目が冴えて、なかなか眠ることができない。

 こんな豪華な宿に泊まるのは初めてだから、緊張しているのかな?


「……ちょっと夜風に当たってこよう」


 みんなを起こさないように注意して、部屋の外に出た。

 そのまま中庭に移動して、夜空に輝く月を見上げる。


「綺麗だなあ」

「そうですね」

「うわっ」


 突然聞こえてきた声に、僕は小さく飛び上がってしまう。


 慌てて振り返ると、ソフィアがいた。


「い、いつの間に……?」

「フェイトが部屋を出ていくのが見えたので、こっそりと後をつけてきました」

「それなら声をかけて……気配を消してついてこられたら、驚くよ」

「ごめんなさい。もしかしたら逢引なのかな、って」

「そ、そんなことしないよ! 僕は……」

「僕は?」

「えっと……ソフィアだけだから。好きなのは、ソフィアだから」

「……」


 夜でもはっきりとわかるくらい、ソフィアが赤くなる。


「この流れは想定していましたけど、いざとなると照れてしまいますね……」

「なら、やめて」

「ふふ、嫌です」


 ソフィアって、たまに意地悪になるんだよな。

 レナみたいだ、って言ったら怒るかな?


「眠れないんですか?」

「うん。あ、でも、深い理由はないよ? あんな宿に泊まるのは初めてだから、ちょっと緊張しているっぽい」

「ちょっと気持ちはわかります。ああいうところは、私も落ち着かないです」

「だよね。屋根と寝れるところがあれば十分」

「それはちょっと……」

「あれ?」


 奴隷だった頃は、むき出しの岩の上で寝ることなんてざらだったから、屋根があるだけでも天国のように思える。


 なんて……

 けっこう昔のことを思い出して、比べてしまった。

 こういうの久しぶりだな。


「ねえ、フェイト」

「なに?」

「手を繋いでもいいですか?」

「もちろん」


 ソフィアと手を繋いだ。

 温かくて、柔らかくて……

 ちょっとドキドキしてしまう。


 そのまま二人で夜の散歩をする。


「そういえば」


 ある程度歩いたところで、ソフィアが思い出したように言う。


「知っていますか?」

「なにを?」

「……今、私達、二人だけなんですよ」


 言われて気がついた。


 人気のない夜の街。

 海が近いため、波が寄せては返す音が聞こえてくる。

 それくらい静かで……

 僕達以外、誰もいない。


「今なら、なにをしてもバレないですよ?」

「え? いや、それは……」

「ふふ、なにを想像したんですか?」

「……な、なにも」


 ソフィアが変なことを言うから、変な想像をしてしまった。

 でも、そんなこと言えるはずもなく、適当にごまかしてしまう。


 そんな僕を見て、ソフィアはくすくすと小さく笑う。

 やっぱり小悪魔みたいだ。


「なにをしてもバレないので……」


 ソフィアが距離を詰めてきて……


「こんなことをしても、大丈夫なんですよ? ……んっ」

「っ!?」


 そっと、頬に柔らかい感触が触れた。

 甘い刺激。

 それはソフィアの唇で……


「ふふ、しちゃいました」

「しちゃいました、って……うぅ。ソフィア、今日は大胆すぎるんだけど……」

「こうでもしないと、フェイトはなかなか前に出てくれないので」


 返す言葉もありません。


「それで……フェイトは、それだけですか? なにかお返しをくれないのですか?」

「……なら」


 僕はソフィアを抱き寄せて、そっとお返しをするのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] こういうシーン久々な感じがしますね。戦いばかりだった気がするので、さて、2人の子供はすぐ出来るのかな? その時はアルトとユスティーナから色々聞くのかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ