437話 海と水着と
「海だーーー!!!」
翌日。
水着を購入した僕達は、さっそく海で遊ぶことにした。
リコリスは、真っ先に海に向かって飛んでいき……
「ぴゃあああ!?」
波にさらわれてしまいそうになる。
「大丈夫?」
「ぜーはー、ぜーはー……危うく死ぬかと思ったわ。海も虜にしちゃうリコリスちゃん、罪な女♪」
なんで喜んでいるんだろう?
「……うにゃあ」
「オンッ!」
「だいじょーぶ、おいで?」
波打ち際で、マシュマロが退け腰になっていた。
なんだかんだ猫だから、水が苦手なのかもしれない。
そんなマシュマロを、アイシャとスノウがおいでおいでする。
怖くないから大丈夫だよ、と誘っている。
ほっこりする光景だ。
「フェイト」
「おまたせー!」
ソフィアとレナの声。
二人は着替えに時間がかかり、少し遅れていた。
振り返り……
「……あ……」
ついつい言葉を忘れてしまう。
もちろん、悪い意味じゃない。
良い意味というか……うん、良い意味で。
ソフィアは、ちょっと大胆なビキニだ。
でも、色が白のせいか、そこまで派手な感じはしないで、ビキニだけど清楚な感じがするという真逆の感想を抱いた。
レナは、フリルがついた可愛らしい水着が。
おへそが見えているところが健康的。
水着の色は黒に近い紫で、なんだか、ちょっとアダルト。
「えっと……どうでしょうか?」
「ねえねえ、似合ってる? ボク、可愛い?」
「その、えっと……」
ソフィアもレナも、すごく可愛い。
とてもよく似合っている。
そう言いたいけど、すぐに言葉が出てこない。
それくらい、僕は二人の水着姿に魅了されてしまっていた。
「「フェイト?」」
「あ、うん……えっと……二人共、すごく……」
「「すごく?」」
「……可愛いよ」
「「っ!!!」」
ソフィアとレナは、同時にガッツポーズ。
それから、全身をぷるぷると震わせて……
「「やった!!!」」
息ぴったりという様子で喜んだ。
素直な感想を口にすると、ちょっと恥ずかしいけど……
でも、ちゃんと口にしないとダメだよね。
二人に喜んでほしいから。
「そ、それじゃあ、遊ぼうか!」
「あ、待ってください、フェイト。日焼け止めを塗りましたか?」
「そういえば……」
アイシャ達はリコリスが塗っていたけど、僕はまだだ。
「ソフィアとレナは?」
「ボク達は問題ないよ。さっき更衣室でしっかりと。本当なら、フェイトに塗ってもらいたかったんだけどねー。隅々まで」
「えぇっ」
「にひひ。ボクはそれでもよかったんだけど、やっぱり、大事なところはフェイト以外には見せちゃダメだからねー」
「この痴女は……」
ソフィアが怒りに拳を握る。
やめて。
二人がケンカをしたら、浜辺が大変なことになっちゃうから。
「と、とにかく……まだなら、私達が塗ってあげますよ」
「うんうん、ボク達にお任せあれ」
「え? いや、それくらい自分で……」
「「任せて!!!」」
「いや、だから……」
「「さあ、そこに寝て!!!」
「えっと、その……はい」
逆らえる雰囲気じゃなくて、僕は素直にシートの上に横になった。
「ふふふ、フェイトの肌に……」
「ボクがフェイトを気持ちよく……」
「ふ、二人共……? その、お手柔らかに……ね?」
なにやらすごく不穏な感じ。
僕、選択を間違えたかもしれない。
……その後。
ビーチに僕の悲鳴が響いたとかなんとか、それはまた別の話。




