427話 余裕を崩すことなく
まず最初に、三人の兵士が突撃してきた。
剣が二人。
後衛の一人が槍。
まずは剣で斬りかかり、牽制。
体勢を崩したところで、槍を突き入れる、という戦術なのだろう。
きちんとしたコンビネーションだ。
通常、これを崩すことは難しい。
でも……
「遅いよ!」
「なっ!?」
二人の剣を必要最低限の動きで避けた。
同時に、体を半身にすることで槍も避ける。
避けたところで下から蹴り上げて、槍を部屋の端に転がした。
同時に足を斬りつけた。
さらに、最初の二人の背中を剣の腹で叩いて、ついでに蹴り飛ばす。
「やりますね」
「一応、それなりに修羅場は潜ってきたつもりだからね」
レナやゼノアスに比べたら、ナナカの私兵なんて可愛いものだ。
わりと簡単に相手をすることができる。
とはいえ、油断は禁物だ。
思わぬところで足元をすくわれかねない。
特に……ナナカ。
彼女からプレッシャーは感じないものの、思わぬ切り札を持っているかもしれない。
油断することなく、慎重にいこう。
「では、これならどうですか?」
ナナカが指を鳴らすと、さらに兵士が押し寄せてきた。
一人、二人、三人……
って、ちょっとまって。
いったい、何人やってくるの?
呆然としていると、部屋をいっぱいにするほどの、数十人の兵士が現れた。
「いくら技量が優れていても、この狭い中で、これだけの数を相手にできますか?」
「なんて無茶苦茶な策を……」
「さあ、いきなさい」
「「「はっ!!!」」」
こんな無茶をすれば、兵士達もタダでは済まない。
しかし、彼らに迷いはない。
ナナカに絶対の忠誠を誓っている様子で、迷うことなく突っ込んできた。
ドドドッ! という、雪崩のような足音が響く。
まるで人の津波だ。
一応、これを捌くこともできるけど……
それをやると、さすがに加減ができない。
ナナカはともかく、兵士達は命令されているだけだ。
できることなら命のやりとりはしたくない。
……なんて、ソフィアやレナに甘い、って怒られるんだろうなあ。
「でも」
油断しているわけじゃなくて。
余裕があるわけでもなくて。
僕は、わりと落ち着いていた。
なぜか?
こういう時、けっこうどうにかなるものだ。
運とか、そういうものじゃくて。
とても頼りになる仲間がいるから。
「といりゃーーーーーっ!!!」
ガシャン! と窓を突き破り、なにから飛来してきた。
それは勢いよく飛んで、戦闘の兵士の頭を蹴り飛ばす。
その反動で後ろに跳んで、くるっと回転。
僕の頭の上に着地する。
「ふふんっ! 見よ! 驚天動地、天上天下、唯我独尊! 世界が認めたスーパーミラクルヒロイン、リコリスちゃん……ただいま参上!!!」




