411話 一夜明けて
天気は晴れ。
青空が広がっていて、気持ちのいい天気だ。
「昨日はお楽しみだったわね」
「「どういうこと!?」」
リコリスの一言に反応して、ソフィアとレナが険しい表情に。
さわやかな朝がどこかに吹き飛んでしまう。
「リコリスがからかっているだけだよ」
「本当ですか?」
「嘘ついていないよね?」
「な、なにもないよ」
「「むー」」
妙なところで息がぴったりだよね、この二人。
「ところで、昨日は大丈夫でしたか? フェイト」
「なんのこと?」
「ナナカと二人きりで食事をしたと聞いていますが……」
「違うよ」
またリコリスが適当なことを言ったみたいだ。
改めて昨日のことを説明する。
普通に食事をしたこと。
その中で、依頼をされたこと。
「魔物の増加と新種、ですか」
「うん。けっこう困っているみたい」
「それ、ボク達がやらないといけないこと?」
「強制的なものじゃないから、スルーしても問題ないよ。ただ、僕は……」
できるなら依頼を請けたい。
せっかくのバカンスが……と思うところはあるけど、でも、見捨てるような真似はしたくない。
それに、このままだと、もしかしたら巻き込まれるかもしれない。
手遅れになる前に事件に関わり、事前に防いでしまうことも大事だと思う。
「では、朝食を食べたら、私とフェイトで街の外を見て回りましょう。リコリスも来てくださいね? レナは、万が一に備えて、アイシャちゃんとスノウと一緒にいてください」
「いやいやいや。ボクがフェイトと一緒に行くよ」
「いいえ、私です」
「ボク!」
「「むー」」
えっと……
なんだか、話がどんどん先に進んでいるような?
「なんだか、依頼を請ける方向になっているけど、いいの?」
「なにがですか?」
「せっかくのバカンスなのに……とか思わない?」
「思いますね。でも、問題が片付いた後に遊べばいいだけです」
「ってか、フェイトはこういうの見過ごせないでしょ? なら、ボク達がやることは一つじゃん」
「ソフィア……レナ……」
二人の言葉がとても嬉しい。
ちょっと涙ぐんでしまいそうになる。
「ま、フェイトってわかりやすいからねー」
リコリスがニヤッと笑い、そんな風に話をまとめていた。
――――――――――
その後……
今度はみんなで朝食を食べて、その席で、依頼を請けることをナナカに伝えた。
まずは冒険者ギルドに報告と手続き。
正式に依頼を請けたところで、僕とソフィアとリコリスは街の外に出て調査を行うことにした。
「はぁっ!」
狼に似た魔物が飛びかかってくるけど、僕は落ち着いて剣を振る。
刃が魔物の胴体を断ち、その命を大地に返す。
一方で、ソフィアも魔物と戦っていた。
巨人のような巨体と、丸太から作られたと思われる大きな棍棒。
オーガだ。
しかも一体だけじゃなくて五体。
オーガ達はその巨体を活かしてソフィアを押しつぶそうとするけど……
「甘いです!」
ソフィアは、まとめてオーガ達を切り捨てた。
しかも一刀で。
どうやったらあんなことができるんだろう……?
僕もそれなりに強くなったと思っているけど、まだまだソフィアには届かないみたいだ。
うーん……ちょっとだけ悔しい。
「フェイト、そちらはどうですか?」
「うん。掃討は終わったよ」
「そうですか……リコリス、周囲に魔物の反応は?」
「んー……ないわね」
後ろでふよふよと飛んでいるリコリスが首を横に振る。
「とりあえず、安心していいわ」
「そうですか。ならいいのですが……ふむ」
「ソフィア、どうしたの?」
「ハンターウルフにオーガ……これらの魔物は仲が良くないので、普通、縄張り争いをするか避けるかしているのですが……」
「共闘していたね」
ありえないことに二種族の魔物は連携をとっていた。
僕は、冒険者歴はそんなに長くないけど、でも、ありえないことということはわかる。
「確かに、ナナカが言うように『なにか』が起きているのかもしれないね」




