409話 食事はみんなで楽しく
「んー……スッキリした」
目が覚めると、窓の外は暗くなっていた。
2~3時間くらい昼寝をしたのかな?
「スノウ、こっちこっち」
「オンッ!」
アイシャとスノウも起きていて、部屋の中でかけっこをしていた。
ソフィアとレナは……
「「……きゅう……」」
折り重なるようにして床に転がっていた。
ぐるぐると目を回している。
たぶん、ダブルノックアウトになったんだろう。
「ソフィア、レナ」
「「……きゅう……」」
「ダメだ。これ、当分起きないよね……」
けっこう本気でケンカをしたみたいだ。
家具や部屋に被害が出ていないのは奇跡みたい。
「失礼します」
扉がノックされて、メイドさんが部屋に入ってきた。
「お食事の準備ができました」
「えっと……はい。今、行きます」
ソフィアとレナはこのままにしておこう。
部屋で暴れた罰、っていうことで。
――――――――――
その後、僕とアイシャとスノウ。
それとリコリスは食堂に移動して、エイシア家の歓待を受けた。
美味しそうな料理がたくさん。
スイーツもお酒もたくさん。
それだけじゃなくて、巨大な食堂の端に楽団がいた。
心が踊るような綺麗な旋律が部屋を満たしている。
「改めて……この度は本当にありがとうございました」
「えっと……どういたしまして」
そこまで大したことはしていないけど……
でも、ここでお礼を拒むのは違うと思い、素直に受け止めた。
「当家にできる最高のおもてなしをさせていただきます。どうか、楽しんでいただければ」
「お肉……いっぱい……」
「オフゥ……」
アイシャだけじゃなくて、スノウも席が用意されていた。
テーブルの上に並んでいる料理を見て、よだれを垂らしそうになっている。
それを見てナナカがくすりと笑う。
「ふふ、もう食べて構いませんよ」
「いいの!?」
「はい。そのために用意したのですから」
「いただきます!!!」
「オンッ!」
二人は勢いよく食べ始めた。
でも、テーブルなどが汚れることはない。
ソフィアのおかげだ。
旅の途中、いつか役に立つからと、二人にテーブルマナーを教えていたんだ。
ただ、まだ完璧というわけじゃないから、口元などにソースがついて汚れていた。
大丈夫かな?
怒られないかな?
不安になってナナカを見ると、にっこりと笑っていた。
「えっと……ごめんね。なんか、こう……元気すぎて」
「気にしていませんわ。それに、子供は元気なのが一番ではありませんか」
「ありがとう。そう言ってもらえると助かるよ」
貴族って、もっと固いイメージがあったけど……
ナナカはとても気さくだ。
今まで会った貴族がおかしかったのかな?
「フェイトさまもどうぞ」
「うん。いただきます」
「いただきまーす!」
僕とリコリスも料理をいただく。
どれも今まで食べたことのないような絶品で、しばらくは手が止まらなかった。
「なにこれ!? めっちゃ美味しいんですけど!」
「リコリス、喉を詰まらせないようにね?」
「ふふん、誰にものを言っているの? この天才無敵合体美少女妖精リコリスちゃんは、喉を詰まらせるなんて芸人みたいなことふぐぅ!?」
「芸人は期待を裏切らないよね」
苦笑しつつ、水が注がれたリコリス用のコップを渡す。
それから指先でとんとんと背中を叩いた。
「……ところで」
同じように食事を進めていたナナカは、一度、フォークとナイフを置いた。
「一つ、お願いがあるのですが」




