表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
408/520

407話 オーシャンホエール

 さらに数日をかけて、海の街オーシャンホエールに到着した。


 海に面した街は北と南で分かれていた。


 北は住宅街。

 そして、海に港が作られていた。

 同時に何十もの船が停泊できるような、巨大で立派な港だ。


 南は商業街。

 色々な店舗が並び、たくさんの観光客が歩いている。

 海水浴場が整備されていて、泳いでいる人もたくさんいるらしい。


「どうですか、我がオーシャンホエールは?」


 ナナカが自慢そうに言う。


 それもそのはず。

 彼女は、このオーシャンホエールを統治する領主の娘だったのだ。


 父である領主の使いで隣街に赴いて、外交的な話をまとめて……

 その帰りに盗賊達に襲われたらしい。


「観光客の方々にもっと安心して来てもらえるように、努力しないといけませんね」

「そうですね。盗賊とか魔物は、わりとたくさんいるので」

「ですが、おかげでフェイト様に出会うことができました。私は、これを運命だと思いますわ」

「えっと……」


 ものすごく反応に困る発言はやめてほしい。


 ソフィアとレナも睨まないで。

 世間話をしているだけだから。

 なにもやましいことはないから。


「みなさまは、宿をとっていらっしゃるのですか?」

「いえ。観光は考えていましたけど、わりと突発的なものだったから、予約はとっていなくて……」

「予約がないと大変ですわよ? 良い宿はすぐに埋まってしまいますからね。残っているのは、ちょっと微妙な宿です」

「そう……なんですか?」

「でも、安心してください。ぜひ、我が家にいらっしゃってください」

「え? でも、それは……」

「フェイト様と一緒にいたいという気持ちはありますが……でも、それだけではありません。受けた恩を返させてくださいませ。どうか私を、恥知らずにさせないでください」


 領主の娘が命の恩人に対して「ありがとう」の一言で済ませたら、確かにそれは問題だ。

 家に招いて歓待するのが普通の流れだろう。


 ただ……


 ソフィアとレナはどう思うかな?

 告白の件で、すっかりナナカを敵認識しちゃっているし……


「そうですね。では、お世話になってもいいですか?」


 意外にもソフィアが最初に話を受け入れた。


 小声で尋ねる。


「いいの?」

「はい。良い宿がとれないというのなら、仕方ありません」

「ちょっと意外」

「私だけなら気にしませんが……」


 ソフィアはちらりとアイシャを見た。


 なるほど。

 娘を安宿に泊まらせたくない、ということか。


 自分よりも娘を優先する。

 ソフィアが立派な『お母さん』をやっていて、そのことがなんだかとても嬉しい。


「それ、ボク達が一緒でもいいの?」


 レナは大きく反対はしないものの、ジト目をナナカに向けていた。

 対するナナカは笑顔で応える。


「はい、もちろんですわ。フェイト様だけではなくて、みなさんも命の恩人ですから」

「なら……まあ、いいかな。ボクも、安宿は嫌だもん」

「あたしもアリよ」


 みんな、問題ないようだ。


 ちなみにアイシャはおねむだ。

 スノウの上に乗っているものの、半分くらい寝ていて、かくんかくんとなっている。

 早く休ませてあげたい。


「じゃあ……せっかくなので、甘えさせてもらってもいいですか?」

「はい、喜んで」


 こうして、僕達はナナカの家に招待されることに。

 これがまた、一つの事件を巻き起こすのだけど……

 それはまた後で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ