402話 絵画のモデルは意外と大変
その後、すぐにモデルの仕事が行われた。
式の会場に移動して、ステンドグラスの下で僕とソフィアが横に並ぶ。
その左右にアイシャとスノウ。
リコリスはアイシャの頭の上に乗っていた。
「では、始めますね」
画家が到着して、さっそく仕事を始めた。
滑らかなタッチで絵を描いていく。
こちらから見えないのが残念だ。
「……これ、暇ね。どれくらいじっとしていないといけないの?」
「数時間は覚悟しておいた方がいいですよ」
「うげっ、そんなに……?」
「合間に休憩があるから大丈夫だよ」
「うへぇ……」
リコリスは、やっぱりやめておけばよかった、なんていう顔をしていた。
一方で、アイシャはとてもわくわくした感じだ。
目をキラキラと輝かせている。
「アイシャは楽しい?」
「うん!」
「あ、えっと……」
尻尾がぶんぶんと振られていた。
これ、大丈夫かな?
「問題ありませんよ。ただ、後で彼女の尻尾だけスケッチさせていただければ」
「あ、はい。わかりました」
優しい人でよかった。
アイシャも尻尾は自分でコントロールできないところもあるみたいだから、仕方ない。
「わたしとおとーさんとおかーさんとスノウの絵……素敵!」
「ちょっと、あたしは!?」
「ワフッ」
「あ、こらスノウ。笑ったわね?」
「スノウをいじめたら、めっ」
「なんか最近、アイシャがソフィアやフェイトに似てきたわね……」
「ふふ。だとしたら嬉しいですね」
「そうだね」
本当の家族になれたような気がする。
でも、ここで終わりじゃない。
これからも一緒の時間を過ごして、何度も笑い、絆を深めていくだろう。
ずっと。
「ねえ、フェイト」
そっと、ソフィアが僕にだけ聞こえる声量で言う。
「こうしていると、結婚式みたいですね」
「う、うん……そうだね。僕も同じことを考えていたよ」
式を挙げる時、こうして絵画に残す人は多いって聞く。
「ちょっとドキドキしますね」
「ワクワクもするかな」
「フェイトは豪胆ですね」
「これくらいで豪胆、って言われても……」
「私は……本当に、ものすごくドキドキしていますから」
ちらりと見ると、ソフィアの頬は赤くなっていた。
りんごみたいだ。
でも、それは僕も同じ。
頬が熱くて、きっと同じように赤くなっていると思う。
「……あのさ」
「はい」
ちょっと迷って。
でも、ここで言わなければいつ言うんだ、と決意を固める。
「今日のこれは依頼だけど……その、えっと……いつか、そう遠くないうちに、本当の式を挙げたい」
「……フェイト……」
「ど、どうかな……?」
ソフィアは……優しく、とても優しい笑みを浮かべる。
「はい、もちろん」
「うん、ありがとう」




