表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
403/520

402話 絵画のモデルは意外と大変

 その後、すぐにモデルの仕事が行われた。


 式の会場に移動して、ステンドグラスの下で僕とソフィアが横に並ぶ。

 その左右にアイシャとスノウ。

 リコリスはアイシャの頭の上に乗っていた。


「では、始めますね」


 画家が到着して、さっそく仕事を始めた。

 滑らかなタッチで絵を描いていく。

 こちらから見えないのが残念だ。


「……これ、暇ね。どれくらいじっとしていないといけないの?」

「数時間は覚悟しておいた方がいいですよ」

「うげっ、そんなに……?」

「合間に休憩があるから大丈夫だよ」

「うへぇ……」


 リコリスは、やっぱりやめておけばよかった、なんていう顔をしていた。


 一方で、アイシャはとてもわくわくした感じだ。

 目をキラキラと輝かせている。


「アイシャは楽しい?」

「うん!」

「あ、えっと……」


 尻尾がぶんぶんと振られていた。

 これ、大丈夫かな?


「問題ありませんよ。ただ、後で彼女の尻尾だけスケッチさせていただければ」

「あ、はい。わかりました」


 優しい人でよかった。


 アイシャも尻尾は自分でコントロールできないところもあるみたいだから、仕方ない。


「わたしとおとーさんとおかーさんとスノウの絵……素敵!」

「ちょっと、あたしは!?」

「ワフッ」

「あ、こらスノウ。笑ったわね?」

「スノウをいじめたら、めっ」

「なんか最近、アイシャがソフィアやフェイトに似てきたわね……」

「ふふ。だとしたら嬉しいですね」

「そうだね」


 本当の家族になれたような気がする。


 でも、ここで終わりじゃない。

 これからも一緒の時間を過ごして、何度も笑い、絆を深めていくだろう。

 ずっと。


「ねえ、フェイト」


 そっと、ソフィアが僕にだけ聞こえる声量で言う。


「こうしていると、結婚式みたいですね」

「う、うん……そうだね。僕も同じことを考えていたよ」


 式を挙げる時、こうして絵画に残す人は多いって聞く。


「ちょっとドキドキしますね」

「ワクワクもするかな」

「フェイトは豪胆ですね」

「これくらいで豪胆、って言われても……」

「私は……本当に、ものすごくドキドキしていますから」


 ちらりと見ると、ソフィアの頬は赤くなっていた。

 りんごみたいだ。


 でも、それは僕も同じ。

 頬が熱くて、きっと同じように赤くなっていると思う。


「……あのさ」

「はい」


 ちょっと迷って。

 でも、ここで言わなければいつ言うんだ、と決意を固める。


「今日のこれは依頼だけど……その、えっと……いつか、そう遠くないうちに、本当の式を挙げたい」

「……フェイト……」

「ど、どうかな……?」


 ソフィアは……優しく、とても優しい笑みを浮かべる。


「はい、もちろん」

「うん、ありがとう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ