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394話 やーだー

 ゼノアスと別れた後、僕達は宿に戻った。


「おとーさん! おかーさん!」


 部屋に戻ると、留守番をしていたアイシャが駆けて、抱きついてきた。

 しっかりと受け止めて頭を撫でると、尻尾がぶんぶんと振られる。


「オンッ!」


 スノウも駆け寄ってきて、ソフィアに頭を擦りつける。

 同じく尻尾が激しく振られていた。


「おかえりー。挨拶は終わったの?」


 リコリスもふわふわと飛んできた。


「うん、終わったよ」

「挨拶だけ?」

「あはは……お礼はまた今度、だって」

「ちぇ」


 ジャガーノートを倒して、黎明の同盟を壊滅させることができた。

 その件で、騎士団と冒険者ギルド、両方から報酬がもらえるらしい。


 そんなものはいらない。

 そもそも、みんなで成し遂げたこと。


 そう断ろうとしたんだけど、


「あなた達がいなければ王都は壊滅していたかもしれない。それを防ぐことができたのは、間違いなくあなた達のおかげです。それだけのことを成し遂げたのですから、どうか、受け取ってください」


「ここで断られたりしたら、冒険者ギルドの面子が……ねえ。ほら、依頼にはきちんと報酬を支払っているだろう? それがなしとなると、色々と困るんだよ。正式な依頼じゃなくても、あれだけの偉業を成し遂げたんだから」


 ……と言われ、断りきることができなかった。

 後日、落ち着いた時に報酬をもらうことになっている。


「なら、おめでとうパーティーはまた今度かしら? ちぇ、今夜のつもりだったのに」

「リコリスは元気だね」

「そう、あたしが元気になることで、みんなも元気にしているの! さしずめ、ミラクルワンダー妖精リコリスちゃんね!」


 意味がわからない。

 この子、ちょくちょく勢いで喋るからなあ……


「ところで」


 ソフィアがレナに視線を向ける。


「どうして、あなたが一緒にいるんですか?」

「ん? なにが?」

「今更、あなたを捕まえようとは思いませんが……ほら。ゼノアスと同じように、好きなところへ行っていいんですよ。しっしっ」

「猫みたいな扱い!?」


 レナが、ガーンというような顔に。


「ボクも一緒にいるよ? パーティーに入れてよ、ねえねえ」

「却下です」

「即答!?」

「泥棒猫を懐に招き入れる人なんていません。さあ、出口はあちらですよ」

「ひど!? ジャガーノートを相手に、一緒に死闘を繰り広げた仲なのに!」

「そんなことありましたっけ?」

「忘れるの早!?」

「また会いましょうね」

「良いこと言っている風でごまかすなー!? ってか、ボクはフェイトと一緒にいるんだー、これからボクも一緒に旅をするんだー、やーだー!」


 レナは床の上に転がり、ジタバタとわがままを言う。


 子供か。


「えっと……ソフィア? あまり意地悪をしなくても……」

「フェイトは賛成なのですか? もしかして、この泥棒猫の誘惑に屈したとか」

「な、ないから。僕は、ソフィアのことが好きなんだから」

「そ、そうですか」

「あのー……ボクの前でイチャつかないで? 泣くよ?」


 レナがジト目を向けてくるけど、気にしない。


「どうして、フェイトはそこまでレナに甘いんですか? やっぱり、好意を持たれているから……」

「そこはあまり関係ないよ。どちらかというと、親近感があるから……かな」

「親近感?」


 昔、僕は奴隷だった。

 未来に希望が持てず、なにもすることができない。


 一方で、レナは黎明の同盟に縛られていた。

 黎明の同盟の命令を聞くことしかできず、他にはなにも持っていない。


 そういう意味で親近感を覚えたのだ。

 これから、彼女はどうするのか?

 完全な自由を得て、なにをするのか?


 それを手伝い、見届けたいという気持ちがある。


「……はぁ」


 自分の気持ちを伝えると、ソフィアはやれやれとため息をこぼす。


「まったく、本当にフェイトは甘いんですから」

「ご、ごめん……」

「でも、だからこそフェイトなんですね。そういうフェイトは好きですよ」

「あ、ありがとう」


 今度は照れた。


 ソフィアはレナに向き直る。


「……いいですか? 妙な真似をしたら、すぐに叩き出しますよ」

「ってことは……」

「仕方なく、本当に仕方なくですけど、ついてきてもいいですよ」

「やったー! ありがとう、フェイト♪」

「うわっ」

「そこで、どうしてフェイトに抱きつくんですか!? お礼を言うなら私でしょう! 斬る、やっぱり斬ります!!!」


 その後、どたばた騒ぎがしばらく続いたけど……

 なんやかんやあって、レナがパーティーに加わるのだった。

新作始めてみました。

『執事ですがなにか?~幼馴染のパワハラ王女と絶縁したら、隣国の向日葵王女に拾われて溺愛されました~』

こちらも読んでいただけると嬉しいです。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 戦勲第一位が褒賞を辞退したら、 誰も褒賞を素直に受け取れ無くなります。 謙虚も行き過ぎると 嫌味を通り越して迷惑にすら成り得ます。 ソフィアはその点、理解ってますよね。 やはり、良い夫婦…
[良い点] あっ!レナがパーティに入るんだ! ん?ということはソフィアとレナが一緒になるということは・・? !水と油の繋がり??いや火災!?
[一言] 戦闘面では間違いなく役に立つし、戦力アップ。 プライベートは……面白くなりそうwww
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