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393話 またどこかで

 エリンとクリフとの話を終えて、宿に戻る。

 すると、宿の前にレナとゼノアスがいた。


 レナは普段着でなにも持っていないけど、ゼノアスはフル装備で大きな荷物を背中に抱えていた。


「あれ? どうしたんですか?」

「そろそろ王都を発とうと思ってな」

「え」


 思わぬ返事に驚いて……

 でも、よくよく考えてみれば当たり前の流れかもしれない。


 ゼノアスは、黎明の同盟の幹部だ。

 ジャガーノート戦では協力してもらったものの、それで今までに犯した罪が帳消しになるわけじゃない。

 騎士団や冒険者に見つかれば捕らえられるかもしれない。


「俺は、俺の生きる目的を叶えた。最強の相手と最高の戦いをする。フェイト・スティアート……お前のおかげだ」


 好敵手と呼ばれ、嬉しい。

 でも、できるのならもっと別のことで競いたかった。

 穏やかで、笑えるような内容がいい。


「本来なら、このまま捕まっても構わないのだが……」

「だーかーらー、それはダメって言ってるじゃん」


 レナが膨れっ面で言う。


「やりたいことやったから満足。あとはなんでもいいや、とかさ、無責任すぎるでしょ? 周りのこと、ちゃんと見て。まったくもう……これだから男は」

「すまん」


 要するに……


 ゼノアスは今後のことはどうなろうと気にしていない。

 罪を受け止めなければいけないのなら、きちんと受け止めるつもりでいた。


 ただ、レナがそれをよしとしない。

 ゼノアスにはちゃんと生きていてほしいと願ったみたいだ。


 そして、それにゼノアスが負けた。

 こんな感じかな?


「なるほど……お兄ちゃんは妹には勝てませんからね」

「ソフィア? それ、どういう意味?」

「後で話しますよ」


 にっこりと笑い、ごまかされてしまう。


「レナ……元気でやれ」

「大丈夫。ボクはいつもどんな時でも元気だからねー。ゼノアスもね?」

「ああ。また、どこかで会おう」

「うんうん。あ、その時はボクとフェイトの子供を見せてあげるね?」

「そんなものはできません!!!」


 ソフィアがものすごい目でレナを睨みつけた。

 殺気すら出ているけど、レナはまったく堪えた様子がない。


 お願いだから、いきなり切り合いを始めたりしないでね?

 戦いが終わったばかりなのに、別の戦いを止めるとか勘弁してね?


「なになに、ソフィアってば妬いているの? ボクにフェイトを取られそうだから?」

「そのような妄想は頭の中だけにとどめてくださいね? でないと、うっかり剣を抜いてしまいそうです」

「ふーん、ボクは構わないけどね。ティルフィングも暴れ足りないみたいだし」

「私のエクスカリバーも、泥棒猫の血を吸わせろ、って言っていますよ」


 それじゃあ魔剣みたいだからね?


「……ふっ」


 ゼノアスが小さく笑う。

 思えば、彼の穏やかな笑顔を見たのは初めてかもしれない。


「楽しい?」

「そうだな……楽しいと思っている」

「剣だけに生きてきたみたいだけど、でも、他にも楽しいことはいっぱいあるよ。これから先、そういうものをたくさん見つけられると思うんだ。僕がそうだったみたいに、運命の出会いとかあるかも」

「……俺に、そんなものがあるだろうか?」

「あるよ」


 未来はなにも決まっていない。

 真っ白だ。

 そこをどんな色に染めるか、その人次第なのだから。


「だから、がんばって生きていこう」


 手を差し出した。


 ゼノアスは少し驚いた様子でこちらを見て……

 ややあって、苦笑して僕の手を取る。


「そうだな、一生懸命に生きていこう」

「うん」


 僕とゼノアスはしっかりと握手を交わした。

 それは、あるいは約束だったのかもしれない。


 また会おう。

 ただ、剣を交わすためじゃなくて、笑顔で話をするために。

 楽しい、って思える時間を過ごすために。

新作始めてみました。

『執事ですがなにか?~幼馴染のパワハラ王女と絶縁したら、隣国の向日葵王女に拾われて溺愛されました~』

こちらも読んでいただけると嬉しいです。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 結局、嫁さんが二人になっても驚きません。 唯、実態は大変ですよ。 後、作者様も 一夫多妻制は否定派の様ですし ・・・ DNAの生存戦略としては、 理に叶ってるとは思いますがね ・・・ …
[良い点] レナとゼノアス、最後は味方になって良かったです!
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