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392話 そして……

 事件から3日が経った。


 黎明の同盟による破壊工作。

 そして、ジャガーノートの出現。


 それらの被害は甚大で、国の今年度の予算の半分が吹き飛んだとか。


 復興作業が始められたものの、まだまだ。

 王都が元の姿を取り戻すのは半年近くかかるらしい。


 物流もほぼほぼストップしてしまった。

 道路が塞がれているせいもあるけど……

 『王都にとんでもない化け物が現れた』という話があっという間に広がり、商人が避けてしまうようになったんだ。

 誰もが王都を避けてしまっている。


 被害は甚大。

 これから大変な時間が続いていく。


 でも……

 それでも、僕達は勝つことができた。


 ここで道が途絶えることはない。

 これからも前に歩いていくことができる。


 それを終わりにしないために。

 ずっと続いていけるように。


 みんなでがんばろう。




――――――――――




「ありがとうございました」

「いやー、思っていたよりも大変なことになったね」


 エリンが頭を下げて、その隣にいるクリフはいつものように呑気に笑う。


 二人は事件の後片付けに奔走していたみたいだけど……

 ようやく時間がとれて、わざわざ挨拶に来てくれたんだ。


「あなた達のおかげで被害は最小限に食い止められました」

「最小限……なのかな?」

「最小限ですよ。あのままジャガーノートが暴れていたら、王都は地図から消えていたと思いますから」


 ソフィアの言う通り、本当にそうなっていた可能性もある。

 それを考えるとゾッとした。


「フェイト殿、ソフィア殿……あなた達は英雄です。本当にありがとうございます」

「いえ、そんな……」

「私達だけで成し遂げたことじゃありませんから」


 僕の言いたいことをソフィアが言ってくれた。


 リコリスが、アイシャが、スノウが。

 レナが、ゼノアスが。

 そして、他にたくさんの人が……


 みんなの力があって乗り越えたことだ。

 僕とソフィアだけが英雄なんてことはない。

 みんなが英雄だと思う。


 ちなみに、他のみんなは宿にいる。

 リコリス達は眠いから、という単純な理由で。

 レナとゼノアスは、まあ……元黎明の同盟なので、色々とあって表には出ていない。


「相変わらず、スティアート君は謙虚だねえ。せっかくの機会なんだから、騎士団からたっぷりと報酬をもらっておけばいいのに」

「いえ、そんなことは……」

「なにを言っているのですか、あなたは? もちろん、差し上げるに決まっているでしょう」

「「え」」


 意外な展開になってきた。


「私達、騎士から協力を依頼しておいて、なにもないなんて恩知らずな真似、できるわけがないでしょう」

「おや。最近の騎士団は、わりとまともになっていたみたいだね。以前は、腐敗の象徴として聞いていたが……うんうん、なによりだ」

「それはギルドも同じでしょうに」

「さて、なんのことやら」


 エリンはクリフを睨みつけて、クリフはエリンに笑って見せる。

 水面下で視線が激突してバチバチと火花が散っているかのようだ。


「報酬については、また今度。今は、感謝の言葉を伝えさせていただければ。本当にありがとうございました」

「いえ、こちらこそ」


 おかげで、ジャガーノートを眠らせることができた。


 倒す、のではなくて。

 眠らせる。


 最善の結果に辿り着くことができたと思う。

 昔から続いていた憎しみの連鎖。

 それをようやく断ち切ることができたのだから。


「スティアート君は、これから大変なことになるだろうけど、がんばってね」

「え、なんでですか?」

「これだけの偉業を成し遂げたんだよ? 冒険者の期待の星として、大注目されることになるよ。もしかしたら、『剣王』の称号が授けられるかもしれない」

「えぇっ!?」


 それって、剣聖に次ぐ称号じゃないか。


「そんなもの、僕には……」

「ふさわしくない、なんて言わないでほしいな。君はそれだけのことを成し遂げた。だから、誇ってほしい」

「えっと……はい」


 なにやら、思わぬ方向に話が進んでいる。

 驚きしかない。


 でも……


「うん、がんばろう」


 全部受け止めて、前に進んでいこう。

 そうすることが、今、生きている僕達の役目だから。

新作始めてみました。

『執事ですがなにか?~幼馴染のパワハラ王女と絶縁したら、隣国の向日葵王女に拾われて溺愛されました~』

こちらも読んでいただけると嬉しいです。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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