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389話 流星のように

 雲が見えてきた。

 あそこを抜ければ地面は……ジャガーノートはすぐそこだ。

 リコリスにもらった魔法を使い軌道を調整する。


「これくらい……なんてこと、ないっ!!!」


 超々高度から落下する。

 とんでもない恐怖だけど……

 でも、ジャガーノートに大事なものを奪われてしまう恐怖の方が勝る。

 それに比べたら、これくらいなんてことはない。


 頭を下にして、体をまっすぐに。

 そして剣を構えた。


 落ちる。

 加速。

 落ちる。

 加速。


 空気がぶつかり痛い。

 目をまともに開けることが難しい。

 本能的な恐怖に失神してしまいそう。


 それでも。


 全てを我慢して、軌道を調整しつつ、ジャガーノートに向けて落ちていく。


「見えた!」


 雲を突き抜けて、戦場となる王都が見えた。

 あちらこちらで火の手が広がり、煙が上がっている。


 中心部にジャガーノートが。

 その巨体を暴れ回らせている。


「これ以上、好きにさせない!」


 さらに数回、軌道を調整して……

 最後に後ろに向けて風の魔法を使い、加速する。


「お願い、力を貸して」


 流星の剣。


 リコリスの友達の剣が生まれ変わったもので……

 頼りになる僕の相棒。


 その輝きは星のよう。

 刃は光のように鋭く。

 そうやって空を駆けて……


「いっけえええええぇえええええっ!!!」

「ナッ!?」


 遥か上……直上からの一撃。

 これはさすがに予想できなかったらしく、ジャガーノートは動揺の声をこぼす。


 そんなヤツの頭部にめがけて、僕は、僕自身を流星と化して着弾した。


 ゴガァッ!!!


 特大の一撃を叩き込んだ。

 同時に、凄まじい衝撃が僕を襲う。

 視界が上下左右に暴れて、全身をバラバラにするような痛みが走り……

 なにが起きているかわからず、吹き飛ばされてしまう。


 それでも剣は離さない。

 相棒をしっかりと握りつつ、僕は浮遊感に身を任せて……


「フェイト!」


 がしっと、ソフィアに抱きとめられた。


「えっと……ソフィア?」

「大丈夫ですか!? 怪我はしていませんか? 痛いところは? かゆいところは?」

「最後、どうでもいいよね……」


 苦笑しつつ地面に降りる。

 ちょっとふらふらするけど、なんとか自力で立つことができた。


「ああもう、ちゃんと説明は聞いていましたが、こうして実際に目にすると、とんでもない荒業ですね……」

「あれくらいしないとダメだと思うから」


 超々高度からの一撃。

 不意を突くだけじゃなくて、ありったけの威力を叩き込むことができる。


 問題は、僕も死ぬかもしれないということ。

 でも、こうしてちゃんと生き残ることができた。


「あまり心配させないでくださいね?」

「大丈夫。僕の帰るところはソフィアの隣だから。ソフィアがいれば、いつでもどこでも、絶対に帰ってくるよ」

「は、はい」


 ソフィアはちょっと照れていた。

 こんな時だけど、やっぱり可愛いな、って思ってしまうのだった。

新作始めてみました。

『執事ですがなにか?~幼馴染のパワハラ王女と絶縁したら、隣国の向日葵王女に拾われて溺愛されました~』

こちらも読んでいただけると嬉しいです。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 流れ星って、地表に辿り着けず 大半は燃え尽きますから・・・ (笑) 『フェイトは燃え尽きて星になった ・・・」  キラーン 作者様のナレーション入りで、葬送されなくて 良かったね、フェイ…
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