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39話 VS死神

「ぎゃあああああ!? なにこれなにこれなにこれ!? あたし、なんかぬるっとしたものに掴まれてるううううう!?」


 リコリスが大絶叫する中、死神が天井から姿を見せた。


「いーやあああああああ!? こいつキモい、めっちゃキモいんですけど!? あたしの体が目当てなの!? 目当てなの!? それはダメ。あっちの人間にして!」

「サラッと、人を売り渡そうとしないでくれませんかね……」


 捕まってもなお元気なリコリスに、ちょっとだけ緊張感が抜けてしまう。


 とはいえ、リコリスが死神に捕まえられたことは痛い。

 迂闊に動くことができず、僕とソフィアは剣の柄に手を伸ばしたまま、死神を睨みつける。


「動クナ」

「……」

「武器ヲ捨テロ」

「……」


 はいわかりました、とおとなしく従うわけにはいかない。

 そんなことをしたら、そのまま殺されてしまうのがオチだ。


「コイツヲ殺スゾ?」

「ぴゃあっ!?」


 鎌がリコリスの喉元に。

 あと少し、力を入れるだけで、彼女の喉は斬られてしまう。


 武器を手放したら終わり。

 だからといって、リコリスを見捨てるわけにはいかない。


 どうすれば……


 うん?

 ちょっと待てよ。

 リコリスは人質に取られているものの、死神は、ちょうどいいことに姿を見せていて……

 ある意味で、これはチャンスじゃないだろうか?


「わかった、武器を捨てるよ」

「フェイト!?」

「……」


 ここは任せて、とアイコンタクトを送る。


「……わかりました。武器を捨てましょう」


 さすが幼馴染。

 僕の意図をすぐに理解してくれるだけではなくて、信頼もしてくれる。

 やっぱり頼りになる。


「これでいい?」


 僕とソフィアは、それぞれ床に剣を置いた。

 そして、それを離れたところに蹴り飛ばす。


「ヤケニ素直ダナ?」

「リコリスを人質にとられているからね。彼女を助けるためなら、仕方ないよ」

「じーん……フェイト、あんた、ものすごく良いヤツだったのね!」

「さあ、そちらの要求は飲んだ。次は、僕達の番だ。リコリスを解放してほしい」

「ククク……ソンナ要求ヲ聞クトデモ?」


 やはり、死神は約束を守るつもりはないようだ。

 そのまま僕とソフィアを始末するつもりなのだろう。


「なら、せめて人質を交換してくれないかな?」

「ナンダト?」

「リコリスは解放してほしい。代わりに、僕が人質になる」

「ソノヨウナコト……」

「こう見えて、ソフィアは強いよ? 素手でも、キミを倒せると思う」

「ム?」

「そんなソフィアに対して、僕はこれ以上ないほどの人質になる。悪い話じゃないと思うけど?」

「……」


 迷うような間。

 ややあって、


「イイダロウ」


 死神は小さく頷いた。


「両手ヲ挙ゲテ、コチラニ来イ」

「わかったよ」


 言われた通り、両手を挙げて死神のところへ。


「フェイト」


 後ろでソフィアが心配そうに僕の名前を呼ぶ。

 大丈夫、というように肩越しに微笑んでみせた。


「はぁあああああ……た、助かったぁ」


 僕が人質となり、代わりにリコリスが解放された。

 素直に約束を守ったというよりは、人質が二人もいても面倒なので、片方を解放した方がいい……と判断したのだろう。


「デハ、ソコノ妖精ヨ」

「あ、あたし!? なによ、まだなんかするつもり!?」

「ソノ女ヲコレデ殺セ」

「えっ」


 死神はどこからともなく短剣を取り出すと、リコリスに差し出した。


「な、なんであたしが……」

「下手ナコトヲスレバ、コノ男ヲ殺ス」

「ぐ……」


 リコリスが死神を睨みつけた。

 ソフィアも、ものすごい殺気を放っている。


 二人に心配をかけたくないので、早く終わらせることにしよう。


「悪いけど……リコリスにソフィアを殺させる、なんてことはさせないし、僕も死ぬつもりはないよ」

「ム!?」


 喉元に押しつけられた鎌を手で掴み、押し返す。

 当然、手は切れてしまうのだけど、自分の意志で掴んでいるから、骨まで切れてしまうということはない。


 痛みを我慢。

 我慢は慣れているから、普通に動くことができる。


「このっ!」

「グアッ!?」


 飛び跳ねるようにして、死神の顎に頭突きを叩き込む。

 星が散るような痛みだけど、頭の硬さ比べは僕の勝ち。

 死神はふらふらとよろめいて、そのまま床に潜り逃げようとした。


 でも、それはダメ。

 死神の手を掴み、この場におしとどめる。


「貴様ッ、離セ!」

「やだよ……ソフィア!」

「了解です!」


 驚異的な瞬発力で、ソフィアはすでに蹴り飛ばした剣を拾い上げていた。

 構えて、


「神王竜剣術・参之太刀……紅!」


 瞬間移動したのではないかと思うほどの超加速。

 そのまま刺突を繰り出して、死神の頭部を剣で貫いた。


 ただの剣ではない。

 世界で一本しかない、聖剣エクスカリバーだ。

 その威力は絶大。


「ア、アアアアアァ……!?」


 死神は抗うことを許されず、そのまま滅びた。

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【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 何で床に潜り込むという物質透過能力を使ってる死神をつかめるのでしょう? そんなあっさり掴めるなら、大した脅威にならないのでは? [一言] 死神が人質とる必要有りました? Aランクの魔物…
[一言] 某プリ○より「エクス、カリバぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!!!」 が脳内をよぎったw
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