380話 最終決戦・その1
なんて大きさだ。
近くに来て、改めて魔獣ジャガーノートの大きさを実感する。
まるで巨人のよう……いや。
巨人よりも遥かに大きい。
山が動いているかのようだ。
「フェイト、いきますよ!」
「うん!」
ソフィアは右から。
僕は左から。
「破山っ!!!」
交差しつつ、全力の一撃をジャガーノートの右前足に叩きつける。
その巨体は、歩くだけで甚大な被害をもたらしてしまう。
だから、まずは機動力を奪う。
そう考えての攻撃だったけど……
「くっ、硬い……!」
ジャガーノートの毛は鋼鉄のように硬い。
それが全身を覆っていて、天然の鎧となっていた。
刃が通らず、弾き返されてしまう。
「ガァアアアアアッ!」
ジャガーノートが吠えて前足を叩きつけてきた。
虫を払うような適当な動きじゃなくて。
必ず殺すという高い殺意を持った、強烈な一撃だ。
当然、真正面から受け止めるつもりはない。
防御なんて無理。
横に跳んで回避した。
回避したんだけど……
「うわっ!?」
叩きつけた弾みで衝撃波が生まれて、それに巻き込まれてしまう。
上下左右の感覚が一瞬なくなってしまい、数十メートルを一気に吹き飛ばされてしまう。
「いたた……まるで竜巻だ」
「フェイト、大丈夫ですか!?」
ソフィアが隣に着地して、手を貸してくれた。
「うん、なんとか。でも、攻撃も防御もとんでもないね……少しやりあっただけなのに、攻略法がぜんぜん思いつかないよ」
「確かに闇雲に戦っていては難しいですね……それに」
ソフィアは苦い顔でジャガーノートを見た。
ジャガーノートはこちらを大して気にしていない。
手近な建物を破壊して回っている。
「このままだと、王都の被害がとんでもないことになりますね……」
「どうにかして街の外に誘い出したいけど、まずは僕達のことを敵としっかり認識させないと」
なにか方法はないだろうか?
急いで周囲を見回して、とあるものが目に入った。
「アレを使ってみよう」
――――――――――
憎い。
憎い。
憎い。
全てを奪った人間が憎い。
人間も、人間が作り出したものも、なにもかも壊してしまえ。
憎悪に取り憑かれたジャガーノートは破壊を繰り返す。
その時、
ガァアアアアアン!!!
「っ!?」
どこからともなく飛んできた巨大な鐘がジャガーノートの頭部に直撃した。
痛みは大したことないが、それなりの質量と速度があったため、軽く仰け反ってしまう。
それと、鐘の音。
音だけは自慢の毛皮で防ぐことはできず、不協和音としてジャガーノートに届いた。
「ガアアアアアァッ!!!」
鐘を投げてきた人間の二人組を睨み、ジャガーノートは怒りに吠えた。
新作始めてみました。
『執事ですがなにか?~幼馴染のパワハラ王女と絶縁したら、隣国の向日葵王女に拾われて溺愛されました~』
こちらも読んでいただけると嬉しいです。




