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378話 目覚める者

 ゴゴゴゴゴッ……!


 突然地面が揺れた。


「うわっ」

「これは……」


 地震にしては揺れ方がおかしい。

 揺れ方が不規則で……

 地面の下に巨人がいて大地を揺らしているみたいだ。


 ほどなくして揺れが収まる。

 代わりに嫌な気配が届いてきた。


 絡みついてくるかのような強烈な殺意。

 窒息するかのようなドロリとした悪意。


「なに、これ……? ひどい感覚だ」

「この気配……墓地の方からですね。レナ、ゼノアス。あなた達はなにか知りませんか?」

「いや、俺はなにも知らないな」

「ゼノアスは戦うことしか興味ないから……これ、ちょっと。ううん、かなりまずいかも」

「レナは心当たりが?」

「消去法だけどね」


 黎明の同盟の幹部は無力化された。

 リケンは倒れて、レナとゼノアスとは和解した。


 残る驚異はトップだと思っていたけど、トップは大して強くないらしい。

 外交能力に長けているものの、それだけ。


「なら、この気配は……誰?」

「もしかしたら、だけど……伝説にある魔獣かも」

「……魔獣……」

「ボクも見たことはないし、実在するなんて本当か知らないんだけど……他のメンバーは存在を信じていたからね。なんか、毎日祈りを捧げていたし」

「それだけ聞くと、まるで邪教ですね」

「まあ、似たようなものだよ。伝承通りなら、魔獣には復讐する権利はあると思うけど……とはいえ、色々とやりすぎているからね。そこはかばえないかな。って、話が逸れた」


 レナは真面目な顔で言葉を続ける。


「こんな異質な気配、ボクも初めて感じたよ。もしかしたら、伝承の魔獣が目覚めたのかもしれない」


 そんなレナの言葉を証明するかのように、


「ガァアアアアアアアァァァッ!!!」


 王都全体を包み込むかのような獣の咆哮が響き渡る。


「あれは……」

「……うそ……」


 果てに巨大な獣が姿を見せた。


 100メートルを超えているであろう巨体。

 その体は黒い毛に覆われていて、カラスの濡羽のように綺麗だ。

 瞳は琥珀のよう。


 三本の尾。

 それと同じく、三つの頭。


 ケルベロスという魔物を巨大化したら、あんな感じになるだろうか?


 でも、その身にまとう殺気は別格だ。

 その怨念だけで人を殺してしまうかのような、濃密な殺意。

 事実、王都のあちらこちらでパニックが起きていた。


「これは……まずいね」


 レナも軽口を叩くことができない。

 たらりと汗を流していた。


「魔獣ジャガーノート……まさか、本当に実在したなんて」

「あれが魔獣……正真正銘の化け物じゃないか」

「あんなものが暴れたら王都は……!」


 一日と保たないだろう。


「……レナ、ゼノアス。お願いがあるんだけど、いいかな?」

「え、なに?」

「リコリスとアイシャとスノウを守ってほしいんだ。できれば、三人を連れて逃げて欲しい」

「ちょっと、それ……」

「あんなヤツが相手だったら、家に隠れていても意味がないと思うから。逃げる方が安全だと思う」

「フェイトとソフィアはどうするの?」

「あいつと戦う」


 とても恐ろしいことなのだけど、不思議と即答することができた。


「ならボクも……」

「レナは、けっこういっぱいいっぱいだよね? ゼノアスも」

「それは……」

「……俺達に任せていいのか? 敵だぞ」

「今もその認識が続いている?」

「……」


 その沈黙が答えだ。


「お願いしてもいいかな?」

「……貸し一つだからね? 後でえっちなことしてくれないとダメ!」

「デートくらいなら」

「仕方ないな。それで我慢してあげる。ゼノアスは?」

「俺も構わない。敗者は勝者に従うのみ」

「ありがとう、二人共」


 味方になってくれてよかった。


「ソフィアは……」


 勝手に決めちゃったけど、よかったかな?


「もちろん、フェイトと一緒に戦いますよ」

「うん、ありがとう」

「お礼なんて言わないでください。私がそうしたいだけですから」

「なら……」


 行こう!

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さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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