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372話 限界を超える

「……すごい……」


 ポーションを飲んで歩けるくらいに回復したソフィアは、少し離れたところでフェイトとゼノアスの戦いを見守っていた。


 ゼノアスは優れた剣士だ。

 いや。

 『優れた』という言葉では足りないくらい、強大な力を持っている。


 巨大な大剣を己の手足のように自由自在に扱う。

 繰り出される攻撃はひたすらに重く強く、盾ごと叩き潰すような一撃を放つ。

 それでいて鈍重ということはなくて、風のように速く、水のように柔軟に動くことができた。


 彼のような剣士は知らない。

 戦ったことがない。

 もしもゼノアスが表舞台に立っていたら、間違いなく『剣聖』の称号を授かっていただろう。


 そんな相手なのに……

 フェイトは、ほぼほぼ互角の戦いを繰り広げていた。


「うあぁあああああ!!!」

「うおぉおおおおお!!!」


 剣と剣が超高速で激突して火花が散る。

 連続で甲高い激突音が響いて、何度も何度も斬撃が飛ぶ。

 それはまるで嵐のようだ。

 触れただけで即死の剣撃の嵐が吹き荒れていた。


 全力のソフィアなら、これだけの攻撃を受けたとしても耐えることができる。

 ついていくことができる。


 それはつまり……


 フェイトは今、全力のソフィアに並んでいるということだ。

 以前から並外れた才能と能力を持っているとは思っていたが、まさかここまでとは。


 つい先日までは、これまでの力は持っていなかったはず。

 一時、行方不明になって……

 ピンチの時に駆けつけてきてくれるまでの短い間に、いったいなにがあったのだろう?

 ここまで劇的に強くなるなんて、どんな秘密があるのだろう?


 そんな疑問を抱くものの、それはすぐに消えた。


 代わりに、ソフィアはじっとフェイトを見る。


「……本当に、すごいです……」


 彼から目を離すことができない。

 じっと、じっと見つめてしまう。


 そして、こんな時ではあるが胸がときめいてしまう。

 胸の奥に甘い感情が広がり。

 むず痒いような気持ちになって。

 自然と頬が熱くなる。


「ダメじゃないですか、フェイト……」


 大好きな男の子が自分を守るために戦ってくれている。

 その姿はなにもよりも輝いていた。


 フェイトのことは好きだ。

 愛している。

 結婚したいし、というか絶対にする。

 そして、○○や○○をして……


 なんて妄想、普段から繰り広げているようなソフィアだ。

 この戦いで惚れ直してしまう。

 今まで以上にフェイトのことが大好きになってしまう。


 そんな気持ちを抱いて、ふと、気がついた。


「もしかしたら、フェイトも同じ……」


 行方不明になっていた間、彼になにがあったか知らない。

 でも、再び立ち上がるきっかけとなったのは……自分かもしれない。

 ソフィアは、そう思った。


 それは自惚れではないはず。

 フェイトのような人間は、誰かのために戦う時こそ、十の力を発揮することができる。

 限界を超えて戦うことができる。


 だから今、ゼノアスを相手に互角の戦いを繰り広げているのだ。


「もう……私が支える、助けてあげる、とか思えなくなっちゃいましたね」


 フェイトは同じ場所に上がってきた。

 ソフィアと本当の意味で肩を並べることができた。


 そんな大好きな人の成長を見て、ソフィアは嬉しく、涙をこぼしてしまいそうになる。


「がんばれ、フェイト」


 自然とそんな言葉が出る。


 今、ソフィアにできることはなにもない。

 だからせめて、信じることにした。

 その想いが大好きな人の力になると信じて、強く強く言う。


「がんばってください、フェイト」

新作始めてみました。

『執事ですがなにか?~幼馴染のパワハラ王女と絶縁したら、隣国の向日葵王女に拾われて溺愛されました~』

こちらも読んでいただけると嬉しいです。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] おや?ソフィアとフェイトの仲が深まったということはこの戦いが終わった後は・・?
[一言] ついに肩を並べる所にきていると認められるところにましたね。
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