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371話 死闘・その3

「ぐっ……!?」


 ゼノアスの顔が苦痛に歪む。


 僕の剣は届いた。

 彼の肩に深い裂傷を刻むことに成功する。


 とはいえ、これで勝ったなんて思わない。

 彼ほどの剣士になれば傷なんて当たり前。

 多少、動きは鈍るかもしれないけど、戦闘不能に陥ることなんてない。


 まだまだ戦いは続く。


「やってくれるな!」


 ゼノアスが吠えて、カウンターを繰り出してきた。

 超高速の突き。

 紅と似ているから、真王竜なのかもしれない。


 復讐を果たすために作られた剣術。

 それはとても鋭く、殺意にあふれていた。


 すぐに跳んで避け……

 いや、避けられない!

 ゼノアスの攻撃の方が早い。


 それを理解した僕は、逃げるのではなくてあえて前に出た。


「うくっ」


 ゼノアスの剣が脇腹を貫いた。

 ただ、咄嗟にこちらから前に出たことで致命傷は避けることができた。


 痛い。

 泣けるほどに痛い。

 でも、まだまだ動くことはできる。


 ゼノアスの行動を真似するかのように、今度は僕がカウンターを叩き込む。


 ……そこから先は剣と剣の応酬だ。

 刃を叩き込み、叩き込まれて。

 斬りつけて、斬られて。

 突いて、突かれて。

 ほぼほぼゼロ距離で互いに剣を振り、自分と相手に傷を刻んでいく。


「うぁあああああっ!!!」

「おぉおおおおおっ!!!」


 どんどん傷が蓄積されていく。

 血が流れすぎたせいか、痛みは感じなくなってきた。


 でも、体が止まることはない。

 むしろ今まで以上に加速して、強く速く剣を振ることができるようになっていた。


 頭はどこまでもクリアだ。

 思考が冴えわたる。

 その中で、どこをどうすればゼノアスに剣を届かせることができるか? どのように戦うことが最適なのか?

 そんなことを考えつつ、彼の一歩上をいくために、戦い続ける。


 それはゼノアスも同じだ。

 僕の一歩上に行こうと、ありとあらゆる角度から攻撃を叩き込んでくる。

 フェイントや視線をズラすなどの技術も織り交ぜてくる。


 一つ選択を間違えれば、その瞬間に僕の命は終わっていただろう。


 でも、僕は生きている。

 こうして剣を振ることができる。


 僕は……まだまだ戦うことができる!


「僕は、絶対に負けない!」


 命を賭けても大事な人を守る覚悟がある。

 でも、本当に命を失うつもりはない。

 それは最低最悪、最後の手段だ。

 最後の最後、本当にどうしようもならなくなった時まで諦めない。

 絶対に諦めない。


 僕が死ぬことで大事な人達を守ったとしても、しかし、それは守ったことにならない。

 きっと心に傷を残してしまう。


 だから、僕は生きて帰る。

 この戦いを生きて乗り越えてみせる。


 それは生に対する執着だ。

 ともすれば醜く映るかもしれない。


 でも……


 どんな形であれ、『生きる』と思う者は強い。

 そのことが証明されるかのように、決着の時が近づいていた。

新作始めてみました。

『執事ですがなにか?~幼馴染のパワハラ王女と絶縁したら、隣国の向日葵王女に拾われて溺愛されました~』

こちらも読んでいただけると嬉しいです。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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