370話 死闘・その2
剣と剣が激突する。
叩き合い。
押し切ろうとして。
交差する。
何度も何度も剣を交わしているのだけど、でも、決着がつくことはない。
「くっ!」
「むぅ!」
僕が前に出れば、ゼノアスも前に出る。
僕が後ろに退くと、ゼノアスも同じタイミングで距離を取る。
僕達の戦い方はとてもよく似ている。
いや。
というよりは、僕の戦い方がゼノアスに似てきたんだろう。
彼は超一流の剣士だ。
すでにその力、戦術は完成されている。
一方で、僕はまだまだ未熟者。
学ぶべきことは多い。
ただ……
足りない部分を今、まさに学習していた。
ゼノアスと剣を交えることで、体で覚えていた。
結果、少しずつだけど彼に追いつき始めた。
動きが最適化されていき、無駄な動作が消えていく。
完成された動きを身に着けていく。
「驚きだな」
剣を交わしつつ、ゼノアスが言う。
「まさか、この戦いの中でさらに成長するとは」
「お礼を言うべきなのかな?」
「むしろ、俺が言うべきだな。貴様のような好敵手に出会えたこと、感謝しなければならない」
「僕としては、あまり嬉しくないけど……ね!」
体を回転させて、その勢いを利用してゼノアスの剣を上に弾いた。
剣を飛ばすことはできなかったけれど、彼はわずかに体勢を崩す。
そこを狙い剣を走らせるものの、わずかに届かない。
偶然避けられた、というわけじゃない。
ゼノアスはこちらの攻撃を見切り、反撃に転じやすいように、ギリギリのところで避けているのだろう。
「あなたは本当にすごい剣士だ」
「それだけの修練は重ねてきたつもりだからな」
「それなのに、黎明の同盟なんてところにいるのは残念」
「今更、説教をするつもりか?」
「ううん」
正直なところ。
今、この瞬間は、黎明の同盟とかどうでもよくなっていた。
頭にある想いは二つ。
大事な人を守る。
そして……この人を超えたい。
「ちょっとだけだけど、あなたの気持ちがわかったかも」
「ほう?」
「あなたと戦って、そして、勝ちたいと思う」
この人は壁のようなものだ。
突然、目の前に現れて行く手を塞いで……
強引に足を止められてしまい、どうすることもできなくなってしまう。
一時は絶望した。
恐怖に負けて、体を縮こまらせるしかなかった。
今も恐怖はある。
でも、それ以上に勝ちたいという気持ちの方が強い。
「いくよ」
深く集中。
そして、足に力を込めて地面を蹴る。
「紅」
超高速の突き。
しかし、ゼノアスはそれすらも対応してみせて、必要最小限の動きで避けてみせた。
でも、僕の攻撃は終わらない。
ガンッ! と音がするくらい地面を踏みしめて、体を捻り、強引に姿勢を変化させた。
頭を低く。
そして、体全体を前に。
紅を攻撃のためじゃなくて移動のために使ったのだ。
そうして、うまくゼノアスの懐に潜り込むことができた。
そして……
「このぉっ!!!」
剣を一閃させた。