369話 死闘・その1
「うぁあああああっ!!!」
「おぉおおおおおっ!!!」
互いに気合を放ちつつ、真正面から激突した。
ギィンッ!!!
衝撃で刃が震える。
少しでも力を抜けば剣が吹き飛ばされてしまいそうだ。
でも……大丈夫。
耐えることができるし、次の行動に繋げることができる。
僕は負けていない。
「こっ……のぉおおおおお!!!」
「む!?」
力に力でぶつかっても仕方ない。
特にゼノアスのような相手だと意味がなさすぎる。
そんなことをしたら押し負けて、あっさりと殺されてしまうだろう。
だから、こうする。
前回と同じように、刃を斜めにしてゼノアスの剣を受け流した。
同時にさらに前へ出て、踏み込み、回転しつつ剣を右から左に薙ぐ。
ゼノアスは受け流された剣を素早く引き戻して、それを盾とした。
再び刃と刃が交差して火花が散る。
こちらも剣を引いて……
しかし、すぐに前に出す。
上から、右から、左から、斜め上から、下から。
ありとあらゆる角度から斬撃を叩き込んでいく。
ゼノアスはその全てをさばいていた。
「さらに速度が上がっている……やるな」
「どうも」
「しかし、それでは俺に届かない」
「それ、ちゃんとわかっているよ」
「なに?」
「だから、僕はこうするんだ」
攻撃の合間に蹴りを叩き込む。
剣と剣の勝負を予想していたであろうゼノアスは、これに対処できなかった。
直撃。
大したダメージはないものの、軽く体勢を崩す。
そこを狙い、ありったけの力で叩き込む。
「壱之剣……破山っ!!!」
ガッ!!!
攻撃魔法が炸裂したような音が響いた。
同時に衝撃が撒き散らされて、その中にゼノアスが飲み込まれる。
山を断つ一撃。
しかし、ゼノアスは無事だった。
「やるな」
「ほんと、とんでもない人だなあ……」
「今の一撃、見事だった。その歳で神王竜をマスターしているのか?」
「ソフィアはマスターしているよ。僕は、少し教わっているだけ」
「ふむ……本当に恐ろしいな。少し、でここまでの威力を出すことができるとは」
殺し合いの最中なのだけど、でも、呑気に話をする。
妙な話だけど、ゼノアスとは気が合うような気がした。
敵味方でなかったら親友になれていたかもしれない、なんて思うほどに。
「神王竜を知っているの?」
「黎明の同盟の一部が使っていた流派だ」
「……そうなの?」
「黎明の同盟をよしとせず、抜けた者達がいつか訪れる戦いに備えて、後世に力を残したのが神王竜。一方で、いつか来る復讐の時に備えて力を磨き続けたのが真王竜だ」
「へえ」
だからレナが使う剣はとても似ていたのか。
納得だ。
「あなたは真王竜を?」
「いや。俺は、ただの我流だ」
他人を信じていない。
信じられるのは自分だけ。
故に、誰にも教わることなく助けられることもなく、一人で力を磨き続けてきた。
きっと、そんな感じなのだろう。
それがゼノアスの強さの源でもあり……
そして、悲しみと孤独の根源でもあるのだろう。
「俺は、俺の力だけで勝つ。他人の助言などはいらない」
「僕は、みんなの力で勝つよ」
ソフィアが教えてくれた剣で。
アイシャとリコリス、スノウの想いを背負って。
ゼノアスという巨大な壁を打ち崩す!




