361話 最強と最強
ギィンッ!!!
鋼と鋼が激突する音が響いた。
ソフィアの聖剣とゼノアスの魔剣。
真正面から激突したそれは、周囲に衝撃波を飛ばすほどの威力を放つ。
「くっ」
「むぅ」
剣と剣を交差させて競り合う。
互いに全力。
一片たりとも出し惜しみはしていない。
それでも……
「ちっ」
わずかにソフィアが押され始めた。
ゼノアスの巨体から繰り出される力はソフィアの上をいく。
さらに巨大な魔剣から生まれる力も聖剣の上をいく。
力比べをしていたら勝てない。
そう判断したソフィアは、全身を使って剣を押し込んで……
途中、ふっと力を抜いた。
「むっ」
ゼノアスが魔剣を振り抜いた。
しかし、ソフィアはすでに安全圏に退避している。
一歩間違えばそのまま両断されていたけれど、そこは剣聖というべきか。
並外れた動体視力、身体能力でゼノアスの攻撃を回避してみせた。
「破山!」
真横に回り込み、全力の一撃を叩きつける。
巨大な岩を断つ剣技。
人に向ければ跡形も残らないだろうが……
「……あなたは化け物ですか」
ソフィアの技を食らい、ゼノアスは吹き飛んだ。
近くの木に激突して、幹をへし折る。
しかし、それだけ。
体が粉々になるということはなくて、わずかに切り傷ができただけ。
ゼノアスはゆっくりと立ち上がる。
「狙いは読めたからな。脇腹に気を集中させて防いだだけだ」
「あの一瞬でそんなこと、普通できるわけがないんですけど……まったく、非常識ですね」
「俺の剣をあのような方法で避けたお前に言われたくない」
ゼノアスは小さく笑う。
「だが、悪くない」
改めて剣を構えた。
「その力、素晴らしい。さすが剣聖と呼ばれているだけのことはあるな。斬る甲斐がある」
「……一つ聞きたいんですけど、いいですか?」
「なんだ?」
「あなたは、どうして戦うんですか?」
「己の存在を証明するために」
その意味がわからず、ソフィアは眉をひそめた。
「俺は戦うことしか知らない。他の生き方はできない」
「なるほど……だから、戦うことが己の存在意義になると? そうすることで、自分がいたことの証明になると?」
「そうだ。戦うことしかできない男だからな」
「それで、いいんですか?」
「構わない」
そう答えたゼノアスに迷いはない。
まっすぐソフィアを見て、静かな闘気を放つ。
「いつまでも戦い続けて、そして、いつか倒れる。それこそが俺の望みであり願いだ」
「なんて厄介な夢を……できれば、私達を巻き込まないでほしいんですけど」
「無理な相談だな。お前が強者である以上、避けては通れない道だ」
「やれやれ」
ソフィアは呆れるような吐息をこぼした。
それから、改めて剣を構える。
「なら、戦うしかないですね」
「そうだな」
「……いきます」
「楽しもう」
そして……最強と最強が再び激突する。




