357話 魔剣使い達の戦い
ふっと、レナとリケンの姿が消えた。
いや。
消えたのではなくて、超高速で動いたのだ。
風よりも速く。
音に近い速度で駆けて、それぞれ剣を振る。
ギィンッ!
レナの魔剣とリケンの魔剣が激突する。
どちらかが勝るということはなくて、ほぼほぼ互角。
競り合う形になり、レナとリケンは剣を持つ手に力を込める。
「やるね」
「ふん、貴様もな」
「でも……」
レナはニヤリと笑う。
さらに力を込めて、地面を足で蹴る。
ガンッ! とリケンの剣を弾き上げた。
リケンは剣を手放すことはないが、体勢が崩れ、数歩、下がってしまう。
レナは体勢を低くしつつ、リケンの真横に回り込んだ。
ぐんっと体を跳ね上げるようにしつつ、刃を下から上に放つ。
「くっ」
首を狙った一撃は、しかし、ギリギリのところで避けられた。
リケンは上体を逸らすようにして回避。
ただ反撃に出る余裕はなくて、仕切り直すために後ろへ跳んで距離を取る。
「うーん、リケンってこの程度? ボク、まだ本気出してないんだけど」
「小娘が、生意気な」
「だって、ちょっとがっかりしちゃうくらいだし? まあ……」
レナは、改めて剣を構えた。
「元々、ボクの方が強いから仕方ないか」
「……そうだな」
「おろ?」
意外というべきか、リケンはあっさりとレナの言葉を認めた。
「確かに、剣の腕は儂よりもレナの方が上だ。それは認めよう」
「なに、降参してくれるの?」
「まさか」
リケンは笑う。
レナを嘲笑う。
「剣の腕は上かもしれぬが、しかし、それが強さに直結するわけではない。吠えるなよ、小娘が。儂の方が強い」
「……っ……」
リケンが不敵に笑う。
その不気味な笑みに、レナは嫌な感覚を覚えて、追撃をためらった。
有利なのはまちがいなく自分だ。
しかし、今のリケンは不気味だ。
下手に踏み込めば返り討ちに遭う。
そう考えたレナは様子を見る。
そして……
「え」
ふっと、リケンの姿が消えた。
なんの前触れもなく。
突然、幻だったかのように消えた。
レナは目を白黒させて……
ぞくりと背中に悪寒が走る。
反射で前に跳ぶ。
ただ、少し遅かった。
「ぐっ」
背中に走る衝撃。
すぐに痛みがやってきて、レナは奥歯を噛んだ。
痛みは無視。
強引に体を動かして振り返ると、いつの間に回り込んだのかリケンの姿があった。
「……今の、なに?」
「さてな。敵に素直に答えを教えるとでも?」
「いいじゃん。ボクとリケンの仲なんだし」
「今は敵だ。そして、敵は殺す」
リケンはそう言い放つと、ニヤリと笑い……
そして、再びその姿が消えた。




