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345話 助けて

「リコリス!? アイシャちゃん!? スノウ!?」


 王都の小さな広場で話をしていると、頭の上にリコリスを乗せたアイシャと、そんな二人を背中に乗せたスノウが現れた。

 涙を流していて、靴を履いていない。

 リコリスも顔を青くしている。


 ただ事ではないと、ソフィアは慌てて二人のところに駆け寄った。


「どうしたんですか、こんな……!?」

「おとーさんが、おとーさんが!」

「フェイトが?」


 ものすごく嫌な予感がした。

 ソフィアの心臓がどくんと跳ねる。


「あうあう……」


 アイシャは泣いていて、なにを言いたいのかよくわからない。

 ただ、耳をぺたんと垂れて尻尾を内股に挟んでいるところを見ると、よほど怖い目に遭ったのだろう。


 それを見て、ソフィアはだいたいのことを察した。


「もしかして……襲撃された?」

「そうよ。なんか、でかいヤツがいきなりやってきて……」


 リコリスが疲れた様子で言う。

 彼女もまた、大きな恐怖と戦っていたのだろう。


「襲撃者……黎明の同盟の者でしょうか? みなさん、急いで戻りましょう!」

「んー? でも、フェイトはめっちゃ強いから、そんなに慌てなくても平気だと思うよ? 多少の差はあるけど、ボクとほぼほぼ変わらないし」

「なら、尚更まずいわ」


 リコリスが真面目な顔をして言う。

 普段、おちゃらけた態度が多いだけに、その真剣な態度に誰もがごくりと息を飲んでしまう。


「レナのことは強いって思うし、とんでもないと思うけど……でも、まだ人間って思えるもの」

「どういう意味?」

「あいつは……人間じゃなくて化け物よ」

「化け物……?」

「あたし、震えて逃げることしかできなかった……」


 そのことを後悔しているかのように、リコリスは自分の体を抱きしめる。

 そうすることで震えを止めようとしているかのようだった。


「化け物、化け物……って、まさか……」


 レナの顔色が変わる。


「ちょっとまって!? そいつ、二メートル近い大男で、めっちゃでかい大剣を使っていた!?」

「そ、そうだけど……」

「……ゼノアスだ……」


 顔を青くして。

 小さく震えつつ。

 レナは、絶望的な表情を浮かべる。


「やばいやばいやばい……まさか、ゼノアスがこんなところで出てくるなんて……しかも、フェイトを狙うなんて……」

「ゼノアス……ですか?」

「確か、黎明の同盟の幹部ですね? でも、どうしてそんなに慌てているのですか?」


 ソフィアとエリンが不思議そうな顔をした。

 そんな二人に、レナは顔を青くしたまま説明する。


「正直、ゼノアスのことはよく知らないんだよ。なにを考えているかとか、過去になにがあったのか、とか。そういうの、まったく語らない人だったから。ただ……」

「ただ?」

「……剣の腕だけは抜群。というか、ボクでも測ることができないほどの実力者。何度か模擬戦をしたことがあるんだけど、ボクの全敗」

「それは……」

「ムキになって、魔剣を使って本気で挑もうとしたんだけど……でも、できなかった。ものすごい悪寒がして……そんなことをしたら殺される、って本能的に理解したんだと思う。まず間違いなく、ゼノアスは黎明の同盟の最大戦力だよ。いくらフェイトでも……」


 レナの声が震える。 

 それが伝染するかのように、ソフィアも声を震わせる。


「それじゃあ、今頃……」

「急いで戻らないと!」

「でも……」


 ソフィアは迷う。

 本当は、一秒でも早くフェイトのところへ駆けつけたい。


 ただ、アイシャとリコリスとスノウのことがあった。

 ここに残していくわけにはいかない。

 もしかしたらリケンが追いついてくるかもしれない。


 誰か一人残り?

 しかし、レナの話が本当だとしたら、戦力を削るようなことはしたくない。

 それに一人残ったとしても、もしもリケンに追いつかれたらとても厳しいことになる。


 迷い、焦る。

 どうする? どうすればいい?


 そんな時……


「おや? こんなところでどうしたのかな?」


 のんびりとした声。

 振り返ると、クリフがいた。

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こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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