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337話 今度はお留守番

「おとーさん、おとーさん」

「どうしたの?」

「えっとね、あのね……絵本、読んでほしい」

「うん、いいよ。こっちにおいで」

「えへへ♪」


 アイシャは嬉しそうに尻尾を振りつつ、僕の膝の上に座る。

 彼女から絵本を受け取り、朗読を始めた。


「むかしむかし、あるところに一匹の狼がいました」

「わくわく」


 ……黎明の同盟のアジトを探さなければいけない。

 最も怪しいのは共同墓地。

 そこをエリンと一緒に調べることになったものの、それはソフィアとレナが担当することに。


 ただ、僕はアイシャ達と一緒に宿で留守番だ。


 アイシャとスノウは狙われている。

 そんな中、二人から離れるわけにはいかない。

 そこで僕が残ることになった、というわけだ。


「ねえねえ」


 ふわりと、リコリスが僕の頭の上に舞い降りた。

 ポリポリとクッキーを食べている。

 欠片が落ちてくるから、やめてほしいんだけど……


「待っているだけなんて、退屈なんですけど」

「仕方ないよ。僕達までアイシャとスノウから離れるわけにはいかないし」

「んー……でも、ここ最近、あたしずっと留守番じゃない? ウルトラミラクルマジカルリリックハートフルワンダースペシャルホリデーライフリコリスちゃんを何度も置いていくなんて、おかしくない?」


 それは、リコリスが場をかき乱すかもしれない、と思われているからでは?


 ……なんてことを思ったものの、それは口にしないでおいた。


「共同墓地は、もしかしたら黎明の同盟の本拠地かもしれないからね。今までとは危険度が段違いだから、仕方ないよ」

「でも、このあたしなら、どんなトラブルも乗り越えられると思わない? 悪人なんて、このリコリスちゃんパンチで滅殺よ」


 言葉がとても物騒だ。


「えっと……ほら。それだけ強いリコリスだからこそ、ここを任されているんだよ」

「ん? どゆこと?」

「アイシャとスノウは狙われているでしょう? そして、二人がさらわれたら、たぶん、とんでもないことになる」


 アイシャは巫女で、スノウは神獣。

 その力を悪用されたら、とんでもない魔剣が生み出されるかも……いや。

 魔剣なんかでは収まらない『災厄』が起きるかもしれない。


「だから、二人を守ることの方が大事なんだ。その大事な任務を果たすには……」

「あたしの力が必要、っていうわけね!?」

「そういうこと」

「ふふーん、そこまで頼りにされているのなら仕方ないわね。このスーパー……」

「おとーさん、続き!」

「オンッ!」

「あ、ごめんごめん。えっと……」

「……」


 アイシャとスノウを優先したら、リコリスが涙目になっていた。


 えっと……ごめん。

 でも、妙な名乗りを聞くよりも、二人のお願いを聞く方が優先度は高いと思うんだ。


「続きは……っ!?」


 絵本を読もうとして、不意に寒気のようなものを感じた。


 背中を突き刺されるかのような、強烈なプレッシャー。

 まだなにも起きていないのに、自然と手が震えてしまう。


「おとーさん?」

「オフ?」

「……アイシャ、スノウ。僕の後ろに」

「う、うん……」


 アイシャとスノウは困惑しつつ、しかし、素直に僕の後ろに隠れてくれた。


 その間に剣を取り、いつでも抜けるように構える。


「リコリス、これは……」

「ええ……敵ね」


 リコリスは軽口を叩くことなく、汗を流していた。

 これだけ余裕がないリコリスは初めて見るような気がする。


 廊下の方から足音が響いてきた。

 ゆっくりとした足音。

 それはまっすぐこの部屋に向かってきて……


「邪魔をする」


 ドアノブを強引に回して鍵を壊して、一人の男が姿を見せた。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] さて、向こうから来たようだな・・・!
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