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336話 幹部

「じゃあ、幹部の話をするね?」


 レナは、ちょっと得意そうな顔をした。

 教師の真似事をできるのが楽しいんだと思う。


「幹部はボクを除いて二人。一人は、リケンっていうおじいちゃん。いつから黎明の同盟にいるかわからないけど、一番の古参かな? おじいちゃんだけど、侮ったらダメ。剣の腕はかなりのもので、ボクのちょい下くらい?」

「なら、大したことはありませんね」

「……大したことないか、今、証明しようか?」

「ふふ、私は構いませんよ」

「ストップストップ!」


 ソフィアとレナがいきなり火花を散らし始めたので、慌てて止めた。


 仲が悪いのかな?

 それとも相性の問題?


「もう、話の邪魔しないでよね」


 レナは頬を膨らませつつ、話の続きをする。


「リケンはそこそこ強いけど、それ以上に悪知恵が働くんだ。参謀? 的な役割で、けっこう厄介だと思う」

「剣の腕よりも知略に優れている……確かに厄介だね」

「もう一人は、ゼノアスっていう男。歳は、うーん……30くらいかな? ちゃんと確認したことないから、よくわからないや。ゼノアスは、ボク以上に戦闘に特化してて、戦うこと以外は興味ないっていう感じ。巨大な魔剣を軽々と扱い、千人以上の敵を一人で相手することができる……文字通り、一騎当千」


 そう語るレナは、ちょっと緊張している様子だった。

 彼女にこんな顔をさせるなんて、ゼノアスっていう人は語る以上の化け物なのだろう。


「で、肝心の長老だけど……ボク、ほとんど知らないんだよね。さっきも言ったけど、あまり会ったことがなくて……っていうか、話をする時も魔法を使っていたりで、直接、顔を見たことがないんだ」

「性別や歳は?」

「たぶん、女性かな? 歳は……うーん、若いようで、でも歳をとっているようにも思えて、なんともいえない」


 レナはとても困った様子だ。

 本当になにも知らないのだろう。


「アジトについて、なにか知りませんか?」


 エリンがそう尋ねた。

 レナが、むむむと眉を寄せる。


「うーん……セーフハウスを除外して、ボロいところも除外して……色々検証すれば、ある程度は絞れると思う。ただ、ボクが離れている間にアジトが追加されているかもしれないから、そこはなんとも」

「それでも、今は他になにも手がかりがないから、教えてくれないかな?」

「うん、いいよ。フェイトの頼みだもんね、えへへ♪」

「デレデレしないでください」


 ソフィアが剣を抜きそうな……というか、柄に手を伸ばしていた。


 やめて。

 気持ちはわからないでもないけど、レナは、とても重要な協力者だから。


「んー……」


 レナは地図をじっと見て考える。

 ややあって、三箇所を指さした。


「北の地下水路。港に面した倉庫。共同墓地。ボクが知っている限りでは、この三つが可能性が高いかな?」


 黎明の同盟の本部となれば、大量の構成員を抱えている。

 貴重な魔剣も複数保管されている。


 故に、セーフハウスをアジトにすることはない。

 除外。


 小さい場所を拠点として活動することも難しい。

 除外。


 ……そうやって、消去法でこの三つが残ったらしい。


「それでも、三つもあるんだよね……」

「これ以外のどこか、という可能性もありますね……まったく。元幹部というのに、役に立たないですね」

「さっきから、ちょっとボクに対する当たり強くない?」

「色々な意味でライバルなので、今から牽制しているだけですよ」

「むう……隙あればフェイトの唇を奪おうと思っているだけなのに」

「絶対にダメです!」

「ケチ」

「……」


 子供みたいなやりとりをする二人の横で、エリンが難しい表情をしてなにか考えていた。

 さきほどのレナと同じように、じっと地図を見つめている。


「どうしたんですか?」

「共同墓地……ここにアジトがあるかもしれない、というのは確かな話ですか?」

「幹部や長老がいるか、それはわからないよ? ただ、アジトがあるのはホント。ここ、ボクも何度か利用したことあるもん」

「ただの墓地なのに?」

「広大な地下室があるんだよ。墓地って、夜は人が来ないでしょ? だから、隠れるのにはけっこううってつけなんだよねー」

「なるほど」


 納得した様子でエリンが頷いた。


「なにか心当たりが?」

「我々もいくらか当たりをつけていて……その一つが、この共同墓地なのです」

「それじゃあ……!」

「はい、調べてみる価値はあるかと」


 共同墓地が黎明の同盟のアジトなのか?

 そこで何が待ち受けているのか?


 この時の僕は……まだ、なにも知らない。

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【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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