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335話 色々と考えないといけない

 部屋のテーブルに王都の地図を広げた。

 僕とソフィア。

 レナとエリンがそれを覗き込む。


 ちなみに、アイシャとスノウは一階の食堂でスイーツを食べている。

 監督役がリコリスなのが少し不安だけど……

 ちゃんとしたらドーナツをあげる約束をしておいたから、たぶん、大丈夫だと思う。


「それじゃあ、レナが知っている限りのことを教えてくれないかな?」

「ん、オッケー」


 レナは気軽な様子で頷いて、ペンを持ち、地図にチェックを入れていく。


「こことこことここ。それと、こことここと……えっと……あ、そうそう。この倉庫もアジトになっているかな」


 黎明の同盟のアジト、セーフハウスなどを地図に描き出してもらっているのだけど……

 どんどんチェックが増えていく。

 その数は想像以上で、ほどなくして地図がチェックで埋まってしまう。


「んー……ボクが知っているのはこんなところかな?」

「これは、なんていうか……」

「すさまじい数ですね……」


 三十近い。

 まさか、これほどの数があるなんて……


「あ、これで全部じゃないと思うよ」

「え」

「ボクも全部を知っているわけじゃないからね。あと、あれから顔を出していないから、さらに増えていてもおかしくないと思う」

「つまり、これが最低限……っていうことなんだね」

「あなたの予想で構いません。最高で、どれだけのアジト、セーフハウスが用意されていると思いますか?」

「うーん……最高で考えると、五十はあるかも? さすがに、それ以上はないと思うけど」


 とんでもない数だ。

 それだけの戦力を王都に潜ませているなんて……

 思っていた以上に、黎明の同盟の力は大きいのかもしれない。


「これ、どうしましょう……?」

「そうですね……」


 エリンに問いかけると、彼女はしばらく黙考した。

 ややあって口を開く。


「これだけの数となると、正直、お手上げですね……特務騎士団だけでは対応できません」

「そんな……」

「やるのならば、国の全ての戦力を投入しなければ……しかし、それだけの決断ができるかどうか」


 エリンは難しい顔で悩んでいた。


 国の全戦力を投入するなんて、非現実的な話だ。

 そんなことをして失敗したら、そこで終わり。

 国は守る力を失い、そのまま滅んでしまうだろう。


 それに、うまくいったとしても問題が残る。

 それだけ大きな動きをしたら、他国を刺激してしまう可能性がある。


 他にも色々な問題、課題が残されていて……

 どのようにこの状況を打破すればいいか、わからない。


「これほどの戦力を有しているとは、正直、予想外でしたね……ただのテロリストと侮っていました」

「きっと……それだけ、強い想いを抱いているのでしょうね」


 ソフィアは、どこか悲しそうに言う。


「復讐のために全てを捧げて、そのために生きてきて……自分達の代だけじゃなくて、先代、その前、さらにその前……ずっとずっと前から準備を重ねてきた。だから、これだけのことができるんでしょうね」


 全てを復讐に捧げる。

 自分だけではなくて、先祖も孫も怨念に巻き込む。


 それは、とても悲しいことだ。

 できるのなら、ここで止めたい。

 僕達のためだけじゃなくて、彼らのためにも。


「うーん」


 考える。

 この状況を打破する方法を考える。


 そして、ふと閃いた。


「よくよく考えてみれば、全部を相手にする必要はないよね」

「どういうことですか、フェイト?」

「敵の戦力に驚いて、そのせいで目が曇っていたのかも。わざわざ全部を相手にする必要はないよ。これだけの戦力を持っていたとしても、頭がなければちゃんと動くことはできない。だから……」

「幹部やトップを叩くことに集中する……ということですか?」

「うん。最低でも幹部以上を叩いて、組織としての活動を不可能にさせる。そうすれば、後は自然と瓦解……とまで、うまくはいかないか。でも、対処はものすごく簡単になると思う」


 蜂と同じだ。

 働き蜂を相手にしてもキリがない。

 女王蜂を叩いて、問題を根本から切り崩した方が早く、そして的確だ。


「レナ、幹部やトップの情報は持っている?」

「幹部は三人で、でもボクが抜けたから残りは二人。ある程度、居場所は絞れるかな? トップは長老って呼ばれてて、あまり会ったことがないんだよね。ただ、本部にいると思う」


 よし、それならなんとかなりそうだ。

 絶望的な戦いと思われていたけど、でも、少し希望が見えてきた。

 その希望を消さないために、がんばっていこう。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 331 ちょっとくらい 「お、多すぎない……?」 「まさか、十を超えるアジトを持っているなんて……」 「たぶん、これで全部じゃないよ? ボクってそこそこの立場にいたけど、それでも、なんでもか…
[気になる点] 331 ちょっとくらい でフェイトとソフィアは既に拠点の数の多さに驚いていたはずなのに、また、再度驚いているような
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