表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
332/520

331 ちょっとくらい

「……とまあ、こんなところかな?」


 テーブルの上に王都の地図を広げて、レナがいくつかの場所を指さした。

 黎明の同盟のアジトの場所を教えてもらっているのだけど……


「お、多すぎない……?」

「まさか、十を超えるアジトを持っているなんて……」

「たぶん、これで全部じゃないよ? ボクってそこそこの立場にいたけど、それでも、なんでもかんでも教えてくれたわけじゃないからね。ボクの知らないアジトやセーフティハウスは、他にもっとあると思う」

「それ、最終的にどれくらいになるの?」

「うーん……セーフティハウスも含めたら、五十はいくんじゃないかな?」

「ご……」


 想像を超える数に、もはや言葉を失ってしまう。


「その中で、本拠地はどこなのですか?」

「ごめん、それはわからないや」

「あなたでもわからないのですか?」

「ボク、最近、会合に顔を出していなかったからね……それに、二人と戦った時のこともあって、こいつ裏切るんじゃないか? って思われてそうだから、顔を出しても本拠地は教えてもらえなかったと思う」

「どういうことですか? その口ぶりだと、最初から知らなかったようですが……」

「あ、それね。本拠地って、定期的に場所が変わるんだ。敵に悟られないために、って」

「なんて厄介な……」


 ソフィアが頭を抱えた。

 そんな彼女に気づいたアイシャとスノウが、よしよしとソフィアを慰めていた。

 リコリスは気にすることなく、食事を続けていた。


 ……性格の差がものすごく出ているなあ。


「よし」


 少し考えて、これからどうするかを決めた。


「とりあえず、休もうか」

「え? ですが……」

「焦っても仕方ないよ。これからどうするか、たくさん考えないといけないけど……旅の疲れもあるから、うまく頭が回らないと思うし。まずは、ゆっくり休むことが大事だと思うんだ」

「そう言われると……そうですね、わかりました。アイシャちゃん、スノウ、部屋に行きますよ」

「ちょっと、なんであたしのことを呼ばないのよ!?」


 ソフィアは気持ちを切り替えた様子で、柔らかく言う。


 それから、みんなで二階の部屋に移動して……


「おー、良い部屋だね。広くて綺麗で、お風呂もあり! 窓からの眺めもいいね!」

「……どうして、あなたがここにいるのですか?」


 はしゃぐレナに、ソフィアのジト目が突き刺さる。


「え? だって、ボク、行くところないし」

「それで?」

「それに、協力関係になったじゃない? なら、ここにいてもいいよね♪」

「むう」


 ソフィアは難しい顔だ。

 レナが黎明の同盟の一員だったことを気にしているのだろう。


「まあまあ、ソフィア。レナはもう、黎明の同盟から抜けたんだから……」

「気にしているのはそこではありません」

「え、そうなの?


 なら、どこを気にしているの?


「レナ……あなたは、まだフェイトを狙っているのですか?」

「それって、命を、ってこと? それとも……」

「その反応……やはり、フェイトを性的に狙っていますね!?」

「ごほっ」


 ソフィアがとんでもないことを言い出して、思わず咳き込んでしまう。


 レナは否定することはなくて……


「ふふ♪」


 怪しい笑みを浮かべるだけ。

 それ、肯定しているのと同じだよね……?


「やはり! そういう不埒な輩をこの部屋に置くわけにはいきません!」

「えー、いいじゃんいいじゃん。ベッド、空いてるでしょ?」

「アイシャちゃんとスノウの分です!」

「わたし……パパとママと一緒がいい」

「オフゥ」


 スノウは、むしろ自分は床の方が落ち着く、という感じで鳴いた。


「うぐ」

「ほら、二人はこう言ってるけど?」

「だ、ダメですダメです! フェイトに変なことをするつもりなんて、なんてうらやましい! ではなくて、けしからないです!」


 落ち着いて、ソフィア。

 ちょっと言葉遣いが怪しくなっているから。


「ボク、黎明の同盟はやめるけど、フェイトを諦めるつもりはないんだよねー」

「ついでに、命もやめてはいかがですか?」

「……」

「……」


 バチバチバチ、と二人は睨み合い火花を散らせる。


 怖い怖い怖い。

 アイシャが怯えているから。

 スノウも、尻尾を足の間に挟んで丸くなっているから。


「フェイトはどう思いますか!?」

「ボク、一緒にいてもいいよね?」

「えっと……」


 しまった、こっちに飛び火した!?


「そ、それは、なんていうか……」

「モテるのも大変ねー……あむっ」


 一人、リコリスは他人事で、部屋に持ち込んだドーナツを食べているのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] 作者様、妄想の時間となりました。 もしもこの場にカナデとニーナがいたら・・・。 カナデ「うにゃ〜、この二人私達と似たような感じになりそうな予感」 ニーナ「二人とも、仲良くしなきゃメッ・・・…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ