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330話 やり直したい

 レナと和解することができた。

 友達になることができた。


 それは、すごく嬉しいことなのだけど……

 ただ、喜んでばかりもいられない。


「レナは……これからどうするの?」


 友達になったものの、レナは、黎明の同盟を抜けてはいない様子。

 なら、この先敵対することも……


「うーん……フェイト達に協力してもいいよ? 王都に来たのは、黎明の同盟と決着をつけるためなんでしょう?」

「「えっ」」


 その言葉はとても意外なもので、ソフィアも一緒になって、驚きの声をあげてしまう。


「い、いいの……?」

「仲間を裏切るのですか?」


 驚く僕。

 厳しい視線を向けるソフィア。


 一方で、リコリスとアイシャとスノウは、食後のお昼寝をしていた。

 なんていうか……平和なのかそうじゃないのか、よくわからない状況だ、これ。


「裏切るというか……正したい、のかな」


 レナは苦笑して……

 本当に苦い表情をして、言葉を続ける。


「あの時、フェイトとソフィアと戦って……お説教されて……ボク、わかったんだ。今のままでいたらいけない、って」


 そして、レナは自分のことを語る。


 レナの両親は黎明の同盟の一員だ。

 だから、レナも生まれた時から同盟の一員となった。


 過去に理不尽に討たれた神獣の敵を討つ。

 憎しみ、恨み、怒り……

 それらを晴らすことが正義であり、生きる道。

 それこそが存在理由であると、そう信じていた。


 そしてレナは、魔剣に対する高い適合性が確認された。

 稀に、先祖の血を強く引いて、魔剣に飲み込まれることなく、自由自在に扱える者が現れるという。

 レナは、その適合者だった。


 両親はレナに期待を寄せた。

 仲間達も期待を寄せた。


 あなたが恨みを晴らすのよ。

 あなたが正義を執行するのだ。

 あなたがやるべきことは、神獣の正義を伝えることだ。


 そんな言葉をずっとかけられて、レナはその気になっていた。

 自分のやるべきことは復讐であり、それは正当なことだと思っていた。


 ただ……


「初めてなんだ。ボクのことを叱ってくれたの……本当に、初めてだったんだ」

「偉そうだったかもしれないけど……うん。僕は、また同じことが起きたら、同じことを繰り返すと思う」


 過去に虐げられた神獣には同情する。


 でも、今を生きる人は関係ない。

 それに、復讐のために同族を犠牲にするなんて、そんなことは間違っている。

 そこに正義なんてない。


 あるのは、ただの憎しみだけだ。


「そんなフェイトだから、ボク、目が覚めたのかも」


 レナは嬉しそうに言う。


「酷いことをしたのに、でも、ボクを見捨てないでくれた。何度も何度も本気でぶつかってきてくれた。必死に呼びかけてくれた。手を差し伸べてくれた……本当に、本当に嬉しかったんだ……」

「……レナ……」

「黎明の同盟の一員じゃなくて、類まれなる魔剣使いでもなくて……フェイトは、ボクのことをただの『レナ・サマーフィールド』として見てくれた」


 レナは涙を浮かべつつ。

 でも、とても晴れやかな顔をして、こちらを見る。


「ありがとう、フェイト」

「……うん、どういたしまして」


 そこまで大したことはしていない。

 ただ、彼女と友達になりたいと思っただけ。


 でも、それが彼女の心に強く響いたのだろう。

 そんなことができて、それはそれで嬉しいと思った。


「だから……ボク、フェイト達と一緒に行動したいな、って。それで、ボクがそうだったように、組織のみんなも考え直してほしいんだ。言われてみると、やっぱりおかしいことだからね……あはは、今更な話だけどね」

「いいえ」


 ソフィアは、そっとレナの手を取る。


「ソフィア……?」

「あなたにとって、黎明の同盟は家族のようなものなのでしょう? それを正そうとすることは、とんでもない勇気がいるはずです。それを、今更と笑うことはできません。そんなことをする人がいたら、私が怒ってあげます」

「……」

「私は、あなたのことを尊敬しますよ」

「……あはは、なんていうか、もう……そんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったよ」


 レナがうつむいた。

 その表情はわからないけど……

 でも、なにも触れないでおく。


「……ありがとう……」


 ややあって顔を上げたレナは、どこかさっぱりした表情になっていた。


「だから、ボクは、ボクにできることをしようと思うんだ。そのために仲間達と戦うことになっても、前に進むよ」

「うん」


 レナに手を差し出す。


「一緒にがんばろう」

「うん!」


 レナは、笑顔で僕の手を取るのだった。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 先生、『リリカル☆なのは』のファンですね。
[良い点] レナが仲間にいや、友達になったか! ここからどうなるか!
感想一覧
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