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329話 友達

「あの時の返事をしにきたんだ」


 それって、最後に会った時に投げかけた、友達になりたいっていう……?


 ついつい緊張してしまう。

 話を知っているソフィアも神妙な顔に。


 そしてレナは……


「あっ、おねーさん。ボク、オレンジジュースで」


 呑気に注文をしていた。


「斬られたいのですか?」

「ボクも喉乾いていたし、こういうところにきたら注文するのがマナーじゃないかな!? だから、笑顔で剣の柄に手を伸ばさないでくれる!? ボク今、魔剣持ってないから、絶対に負けちゃうし!?」


 ソフィアの殺気にあてられて、ものすごく慌てるレナだった。

 っていうか、今……


「魔剣、持っていないの?」

「えっと、あー……うん」


 レナはバツの悪そうな顔をして、小さく頷いた。


「あれ持ってると、ちょっと精神が悪い方に引っ張れるんだよね。ハイになるっていうか、倫理観がズレるっていうか……副作用みたいなものだと思う」


 たまにレナの様子が不安定になる時があったけど、そういう理由があったのか。


「それと……フェイトに言われて、これでいいのかな、って思ったんだ」

「それは、どんなこと?」

「ボクは過去の惨劇の復讐をしないといけない。それこそがボク達、黎明の同盟の望み。先祖の無念を他に誰が晴らす? そう思っていた。うん、それは今も思っているんだけど……ただ、さ。フェイトの言葉がぐさり、って胸に刺さって……」


 復讐のためなら、なにをしても構わないのか?

 惨劇を引き起こした者と同じことをしているのではないか?


 そんな感じの言葉を投げかけた記憶があるけど……

 それは、レナの心に届いていたみたいだ。


「どうしていいかわからなくなって、あの場では退いて……それから、ずっと考えていたんだ」

「答えは出たの?」


 レナは首を横に振る。


「……まだ、わからない」

「そっか」

「でも……フェイト達とはもう戦いたくないかな、って」

「うん、僕もレナとは戦いたくないよ」

「それと……その……あの時言ってくれたこと、覚えている?」

「友達になりたい?」

「そう、それ!」


 レナは満面の笑みを浮かべた。


「フェイトがそう言ってくれて、ボク、嬉しかったんだ! ものすごく、すごくすごくすごく嬉しかったの!」


 ぐいぐいっと迫ってくる。


 嬉しいのはわかったから、やめて。

 ほら、ソフィアが殺気を放っているから。


「だから、その……」


 急にレナの元気、勢いがなくなる。

 迷子の子犬のような目をして、チラチラとこちらを見る。


「ボクを、その……なんていうか、えっと……」


 すがるような目をこちらに向けて、


「と……友達に、なって……くれませんか……?」

「うん、いいよ」

「軽っ!? ボク、一世一代の告白だったのに! 崖から飛び降りる覚悟でお願いしたのに! なんか、ものすごく軽い!?」

「でも……」


 レナの気持ちはわかる。

 ちょっと適当に返事をしすぎたかもしれない。


 でも、彼女のことが嫌いとか、どうでもいいとか、そういう風に考えているわけじゃなくて……


「僕はもう、レナのことは友達だと思っていたから」

「え」

「そうなりたい、って思っていて……そうしたら、なんかもう、僕の中では友達でいいか、って思うようになって……うん、そんな感じ」

「……なにそれ」

「なんだろうね? でも……」


 レナに手を差し出した。


「なら、改めて。僕は、フェイト・スティアート。友達になってくれませんか?」

「っ」


 レナは、一瞬、泣きそうになって……

 でも、涙は我慢する。


「ぼ、ボクは……!」


 ちょっと声が震えていた。

 でも、なにも言わない。

 ただただ、レナの行動を見守る。


「ボクは、レナ・サマーフィールド……ボクの方こそ、友達になってください」


 握手を交わして……

 そして、僕達は『友達』になった。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 私が物語のマスターだったら 絶対にレナを『悲劇のヒロイン』にしちゃうなぁ ・・・ (苦笑) 上げて、どん底まで叩き堕とす的な ・・・ そうはなら無い事を望みます!
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