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328話 やっほー

 宿を確保したので、次は情報収集だ。


 ただ、ここは敵地。

 派手に動いたらすぐに見つかってしまうかもしれないので、慎重に動かないといけない。


 なので、まずは定石通り、一階の食堂兼酒場で情報収集をすることにした。


 最近、怪しい人を見かけなかったか?

 おかしな事件は起きていないか?

 どこかで異変が発生していないか?


 情報屋を含めて、色々と話を聞いてみたのだけど……


「収穫なし、ですね……」


 テーブルに戻ったソフィアは、どこか疲れた様子で、あらかじめ注文しておいたドリンクを飲んだ。


「ごめん、僕もめぼしい話は聞くことができなくて……」

「くっ……この天才美少女名探偵マジカルミラクルラッキーハッピースマイルリコリスちゃんが、なにも成果を得られないなんて!」


 リコリスは悔しそうに言うものの、ドーナツをかじっているものだから、あまり悔しそうに見えない。


「あむっ、はむっ」

「オフッ!」


 アイシャとスノウはごはんに夢中になっていた。

 かわいい。


「敵の本拠地となれば、多少の情報は流れているものですが……」

「なにもないね。たぶん、情報統制が徹底されているんだと思う。クリフの話によると、冒険者ギルドにも食い込んでいるみたいだから……」

「そうなると、他の組織にも手が伸びている可能性がありますね。下手をしたら王家まで……」


 下手に手を出してくることはない。

 己の情報を徹底的に秘匿して、表に姿を出さず、隠れてしまう。

 そうすることで、黎明の同盟は強固な防御を得ているのだろう。


 攻撃をしようとしても、敵が見えなければどうしようもない。

 そのことをよく理解しているように思えた。


「困りましたね……ここまで徹底的に存在が隠されていると、情報を掴むのはかなり厳しいです。不可能ではありませんが、相当な時間がかかってしまいます」

「たぶん、あまりのんびりしていられないよね」


 途中、僕達は黎明の同盟による足止めを食らった。

 それはつまり、僕達に王都に来てほしくない、ということ。


 連中がなにか企んでいるようにしか思えない。


「どうにかして情報を手に入れたいんだけど……うーん」

「……その情報だけど、どうにかしてあげようか?」

「えっ」


 ふと、聞き覚えのある第三者の声が割り込んできた。

 慌てて振り返ると……


「やっほー」

「「レナ!?」」


 黎明の同盟の幹部。

 そして、少し前に死闘を繰り広げたレナがそこにいた。


「まさか、あなたが自ら赴いてくるとは……!」

「あーっ!? まったまった、ボク、なにもしないから!?」


 剣を抜こうとするソフィアを見て、レナが慌てた様子で言う。

 よくよく見ると、彼女は帯剣していない。


「……ソフィア、落ち着いて」

「ですが!」

「レナがなにか企んでいる、っていう可能性は高いと思うけど……でも、彼女は剣を持っていない。どこまで本気かわからないけど、なにか話をしたいんだと思う」

「……仕方ありませんね」


 ソフィアは席に座る。


「ただし、妙な真似をしてみなさい。その時は、あなたの髪、全部斬り落とします」

「こわっ!? 腕とか首じゃなくて、髪を狙うところがすっごく怖いんだけど!?」


 レナは本気で怯えている様子で、ビクビクしつつ空いている席に座った。


「それで……いきなり、どうしたの?」

「近くにいたから挨拶に、てへ」

「そうですか、そんなに丸刈りを希望したいですか」

「うそうそうそ!? ごめんなさい!?」


 丸刈りはよほど嫌らしく、レナは涙目になって頭を下げた。

 まあ、女の子なら当たり前に嫌か。


「あー……その、なんていうかね? あんな別れ方をした後だから、なんかこう、気まずくて……どうやって話をしたものかな、って迷って」

「それで、ちょっとおどけてみせた?」

「そう! さすがフェイト、ボクのことをよく理解してくれているね♪」

「フェイトに手を出しても斬りますよ?」

「ちょっとくらい、いいじゃん」


 そこは譲れないらしく、レナは唇を尖らせた。


「それで……どうして、僕達の前に姿を見せたの?」

「それは……」


 レナは真面目な顔を作り、まっすぐにこちらを見て言う。


「あの時の返事をしにきたんだ」


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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] レナ・・・、果たして分かりあえるのだろうか・・・? なんか、ユスティーナサイドのアベルを彷彿とするなあ。
[一言] ハーレム推進委員会地方平会員モブC「もう、ソフィア・ミント・レナのハーレムルートでええんやで~」
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