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327話 しがらみ

「え?」


 こんなにもあっさり拒否されるとは思ってもいなかったため、ついつい間の抜けた声が出てしまう。


 さきほどの真剣な様子はどこへやら、クリフはいつもののんびりとした雰囲気に戻っていた。

 そしてまた、ドーナツをぱくり。


「協力したいけどね。でも、協力できないんだ」

「それは、どういうことですか?」

「黎明の同盟は協会の内部にも入り込んでいる、って言っただろう? 下手に行動したら、彼らを警戒させてしまう。なら、なにもしない方がいい」

「なるほど……?」


 理に叶っているような、叶っていないような……どっちなのだろう?


「下手に動いても潰されるだけだからねえ……なかなか動くことはできないんだよ」

「そう、ですか……」


 クリフなら……と思っていただけに残念だ。

 凹む。


 そんな僕を見て、クリフはニヤリと笑う。


「まあまあ、早とちりしないでくれ。僕はなにも、完全に協力をしないわけじゃない」

「えっと……?」

「今はまだ動けない、っていうだけさ」

「ということは……いざという時は、力を貸してくれるんですか?」

「うん、そうだね」


 クリフはにっこりと笑顔を浮かべつつ、頷いた。


 こんな態度だけど、実はしっかりした人ということを知っている。

 そんな彼の言葉なら信用できそうだ。


「本当なら、今すぐにでも力を貸したいんだけどね。下手に出世したせいで、色々としがらみも増えてきてねえ……はぁ、のんびりしたい」

「えっと……おつかれさまです」

「あはは、ありがとう。おっと、もうこんな時間か」


 店内の時計を見てクリフが席を立つ。


「スティアート君も、すぐに行動を起こすつもりはないんだろう?」

「そうですね、たぶん」

「なら、また会おう。必要な時に呼んでほしい。王都のギルドに行って、伝言を残してくれればいいよ」

「わかりました」

「あ、それとここの会計は僕が持つよ。またね」


 クリフはひらひらと手を振り、先に店の外へ出た。


「うーん……久しぶりに会ったけど、あいかわらずの人だなあ」




――――――――――




 その後、一度外に出て、ソフィア達と合流。

 再び宿へ戻り、そのまま部屋へ移動した。


「おーっ!」


 綺麗で洒落た部屋を見て、リコリスが目をキラキラと輝かせた。


「わぁ♪」

「オンッ!」


 アイシャとスノウもキラキラ笑顔だ。

 大きなベッドにダイブして、ぽふんという反動を楽しんでいる。

 二人共、尻尾をぶんぶんと振っていた。


 ちょっと行儀が悪いけど……

 楽しそうだから、まあいいか。


「良い宿ですね」

「うん。クリフに教えてもらったんだ」

「……あのギルドマスターがここに?」

「実は……」


 経緯を話すと、ソフィアは難しい顔に。


「妙な偶然ですね……彼は本当に大丈夫なのでしょうか? もしかしたら、実は黎明の同盟の一員という可能性も……」

「それは考え過ぎじゃないかな? だとしたら、スタンピードを止めようなんて思わないだろうし」

「……それもそうですね。ふう。敵がすぐ近くにいるせいか、少し緊張して、過敏になっているのかもしれませんね」


 ソフィアの言うことはよくわかる。

 僕も似たような感覚になっていて……それと、妙に落ち着かない。

 ピリピリとした雰囲気が王都全体に流れているというか……

 例えるなら、壁一枚隔てた向こうに猛獣がいるような感覚だ。


「ここに黎明の同盟の本拠地があって……ちゃんと決着をつけられるのかな?」

「つけましょう。世界のためとか復讐とか、そういうのはどうでもいいですが……アイシャちゃんのために」

「うん、そうだね」


 大事な人のために戦う。

 理由はそれでいい。それだけあれば十分だ。

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こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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