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326話 思い切って

「どうしたんだい?」


 僕の迷いを察した様子で、クリフは不思議そうな顔をした。

 追加で注文したドーナツをぱくぱくと食べている。


 威厳なんてまったくない姿だけど……

 でも、本当はとても有能ですごい人ということを知っている。


 うん。

 どうなるかわからないけど、話をしてみよう。


「大事な話があります」

「ふむ」


 クリフは真面目な顔をして……

 パクリと、追加のチョコドーナツを食べた。


「えっと……真面目な話があるんですけど」

「わかっているよ。ほら、そういう話をする時は頭を使うだろう? 頭を使うと、糖分が必要になるからね。だからこうして、ドーナツを食べているわけなのさ。はむっ」


 もっともらしいことを言うけど、本当なのかな? と疑ってしまう。


「それで、話っていうのは?」

「あ、はい。少し長い話になりますけど、実は……」


 黎明の同盟について、ある程度のことを話した。


 遥か昔の神様の……という部分は省いた。

 そこまで説明すると、かえってうさんくさくなってしまう気がしたからだ。


 だから、魔剣という危険な武器を量産してて。

 王都の転覆を企んでいるテロ組織がある、ということを説明した。


「……ふむ」


 普段の飄々とした態度が嘘のように、クリフは真面目な顔に。


 ……そんな状態でも、ドーナツを食べる手は止まっていないけどね。


「まさか、スティアート君の口から黎明の同盟の話が出てくるなんて」

「えっ、もしかして知っていたんですか?」

「スティアート君ほど詳しくなかったけど、そこそこに……ね」


 クリフ曰く……


 ギルドマスターの地位をしっかりと固めたクリフは、その後、協会の改革に乗り出したらしい。

 前任者のアイゼンのように焦ることなく、ゆっくりと、しかし確実に改革を推し進めていく。


 その甲斐あって、ある程度、協会は自浄作用が働くようになった。

 そして、その功績を評価されて、クリフは協会の幹部の会合に呼ばれるほどに出世した。


「出世なんてしたくないんだけどねー」


 なんて、あははと笑いながら言う。

 話が逸れた。


 そうやっていくらかの会合に出席して情報を集めていると、黎明の同盟の影があることに気がついたらしい。

 黎明の同盟は冒険者協会にまで入り込んでいて……

 あちらこちらで暗躍しているという。


「協会のお偉いさんにも接触していたから、新しく湧いてきた危険な組織なのかな、って思っていたんだけど……そっか。かなり前から存在する、とても危険な組織だったんだねえ」

「なんか、適当な口調ですね」

「これでも十分驚いているよ。それに……魔剣の話は、僕のところにも流れてきているからね」


 クリフは難しい表情を作る。


「協会の間でも、ちょくちょく話題に取り上げられるようになってきたんだ。ただ、誰かが裏で繋がっているから、本格的な調査はできなくてね」

「そんなことに……」


 冒険者協会にまで入り込んでいるなんて……

 ほんと、黎明の同盟のしたたかさはすごいと思う。


「それで……その話を僕にして、スティアート君はどうしたいのかな?」

「協力してほしいです」

「協力?」

「黎明の同盟の本拠地は、ここ、王都にあります」

「……それは本当かい?」

「はい」


 ここで疑念を抱かれてはたまらないので、しっかりと頷いておいた。


「確かな情報です」

「なるほど……それで、黎明の同盟を叩くために、いや。まだ場所は突き止めていない。詳細な情報がない。そのために協力してほしい、というわけだね?」

「は、はい」


 さすがというか、クリフは頭の回転が速い。

 僕が言いたいこと、全て言われてしまった。


「このまま放っておいたら、どんなことになるか……そうなる前になんとかしたいです」

「つまり、黎明の同盟を叩くと?」

「はい、協力してくれませんか?」

「ごめん、無理」


 あっさりと言われてしまうのだった。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] ここから先は王都の展開か、はてどんな展開になるのかな?
[良い点] 「ごめん,無理」 現実的に予定があるのだから,そりゃそうだろう。 と考える人と(グルだから)無理だろ。 という2つの説が上がって,考察がはかどりそうですね。 [一言] 結局,どうなるのかは…
[気になる点] 今のフェイトの冒険者ランク 各地で活躍(貢献)してきたから 結構あがってるのかな? 懐かしのクリフが出てきてふと思ったw
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