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321話 新しい旅

 数日後。


 アルベルトが馬車を用意してくれたということで、僕達は庭に移動した。


 ちなみに、この数日、彼の屋敷でお世話になっていた。

 なにもかもお世話になって申しわけなかったのだけど、アルベルトとしては、これくらいさせてほしい、とのことだった。


「わぁ……」

「これは……すごいですね」


 馬車を見た僕とソフィアは目を丸くして驚いた。

 アイシャとスノウは興味津々といった様子で、尻尾をぶんぶんと振りつつ馬車を見ている。


 馬車というよりは、小さな家?

 寝室にキッチンにシャワーがついていて、それでいて、色々とコンパクトに収められている。


 馬は二頭。

 どちらも大きくて力強そうで、いくらでも走り続けることができそうだ。


「旅を続けるのなら、これを使ってほしい。宿泊ができて、料理やシャワーを浴びることもできる。それなりに頑丈だから、嵐が来た時の避難所としても使えるよ」

「こんなもの……いいんですか?」

「なに、構わないさ。君達は、このレノグレイドの救世主だからね。むしろ、これくらいの礼で足りるか不安に思っているよ」

「ありがとうございます」


 十分すぎる。

 これなら、王都まで快適に過ごすことができるだろう。


「じゃあ、さっそく食料や水を買いに……」

「それには及ばない。基本的なものは、すでに積み込んでおいたよ」

「え?」


 慌てて中を確認してみると、食料や水、衣服までも用意されていた。


「こんなことまで……え、本当にいいんですか?」

「言っただろう? これくらい、なんてことはないさ」

「ありがとうございます」


 ソフィアがお礼を言うと、アルベルトはニヒルに笑う。


「これで、惚れてくれたりしないかな?」

「フェイトの前に出会っていたら、あるいは」

「やれやれ……結局、私は完膚なきまでに振られてしまったみたいだね」

「えっと……なんか、ごめんなさい」

「いいさ。恋は完璧にいくものではない……だからこそ楽しく、熱中するものだからね」


 アルベルトらしい言葉だった。


「ねえねえ、フェイト。全部揃ってるってことは、もう出発するわけ?」


 リコリスの問いかけに、僕は小さく頷いた。


「うん、そうだね。あまり時間は無駄にできないから」


 レノグレイドの事件に黎明の同盟が関わっていた。

 急いだ方がいいだろう。


 みんな、馬車へ移動して、それぞれの私物を積み込んでいく。

 それと、足りないものも融通してもらい、それらも積み込んでいく。


 そんな中、僕はアルベルトと向き合う。


「あの……」

「うん? どうかしたのかな」

「ありがとうございました」

「それは私の台詞なのだけど……」

「それでも、ありがとうございました。色々なことを学べた気がします」

「ふむ」


 アルベルトはこちらを見て……

 ややあって、苦笑する。


「こうなるのは自然の流れだったのかもしれないね」

「なんのことですか?」

「君とアスカルトさんのことさ。私が立ち入る隙なんて、最初からなくて……二人は二人で完結しているのだろうね。とてもうらやましい関係だ」


 そう言われると嬉しい。


「えっと……お願いがあるんですけど」

「なんだい?」

「また、ここに来てもいいですか?」


 アルベルトは目を大きくして驚いた。

 少しして、優しく笑う。


「ああ、もちろんだ。ただ、とある条件が必須となるな」

「条件?」


 アルベルトは手を差し出してきた。


「私の友になってくれないかな?」

「……」

「どうだろう?」

「喜んで」


 僕は笑い、アルベルトの手を取るのだった。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] フェイトとソフィアの仲を結果良くしましたね。 アルベルトには幸せになって欲しいですね。
[一言] 設定でわかっていたとはいえ、安心しました。タイトルから逸脱してしまいますからね。
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